新型コロナウィルス感染症の後遺症としても注目された味覚障害。実際には、コロナに罹患せずとも、毎日の食生活の中にも、味覚障害を来すリスクは潜んでいます。
私たちの食生活の中で、一体何に起因して発症するのでしょうか?
実はこのリスクファクター、男性の生殖機能にも大きな影響を与えています。
相容れない2つの事象。これらの引き金となるもの、その正体は一体…?
目次
1. ミネラルとは?
1.1 構成
1.2 働き
2. 縁の下の力持ち亜鉛
2.1 歴史
2.2 働き
3. 程よい加減の亜鉛量とは?
3.1 推奨量と耐容上限量
3.2 過不足で発生する健康リスク
3.2.1 亜鉛と味覚障害
3.2.2 亜鉛と家族計画
4. 亜鉛を効率よく摂るには?
5. まとめ
1. ミネラルとは?
ビタミンとミネラル。対で表現されることが多い2つの栄養素群。何れも、体内での量は微量ながらも、生命活動や健康を支え、カラダを構成し、成長・発達を促すために不可欠な栄養素が結集しています。今回は、ミネラルに焦点を当てて見ていきましょう。
1.1 構成
英語ではMineral。鉱物全般を示す言葉です。金・銀・銅など、一般的には、道具や装飾品として加工され、オブジェとしての役割が広く認知されていますが、私たちの体内でも「栄養素」として健康に大きく関与しているミネラル元素が存在します。
自然界に存在する約90種の元素のうち、栄養素として体内で活躍している食事摂取基準が定められているミネラルは13種類。体内に多く存在する多量ミネラル5種と鉄含有量以下で量が少ない微量ミネラル8種に分類されています
1.2 働き
ミネラルは主に、骨や歯を形成する構成成分、エネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)の構成成分、酵素反応を活性化、神経や筋肉の興奮伝導への関与、タンパク質構造の維持など、生命活動には無くてはならない役割を各々の元素が担っています。
2. 縁の下の力持ち亜鉛
骨や歯を形成するカルシウムや赤血球の成分である鉄と比べると、いささかマイナーな印象がある亜鉛。その秘めたる存在とは裏腹に、その摂取量の適正さ如何によっては、私たちの健康状態を大きく揺るがす重要な役割を担っています。
2.1 歴史
亜鉛の欠乏が健康状態を大きく揺るがすことが判明し解明されたのは1960年代。
イラン、エジプトなどの中東諸国で、酵母菌を含まないパンと牛乳や少量の野菜のみと言った栄養バランスに偏りのある食生活を送っていた青年たちの間で、貧血や小人症、性腺機能低下の報告事例が相次ぎ、その原因は、食事からの亜鉛摂取不足であることが明らかにされました。
その後も、脱毛や皮膚炎、味覚障害が亜鉛欠乏に起因するなど、病気の発症との因果関係が相次いで報告されています。
2.2 働き
鉄や銅など他の金属イオンと同様に、亜鉛は、タンパク質と結合する能力を有しており、タンパク質の構造の安定性、酵素活性などに寄与するため、皮膚や毛髪の成長、免疫機能、アルコール成分の分解過程、味覚センサーの役割を担う味蕾の形成など、美と健康の中核を成す働きを多岐にわたって支えています。
また、血糖値を下げる働きを有するインスリンの構成にも亜鉛は関与しており、糖尿病やメタボリックシンドロームの改善に遠因的に寄与している可能性も示唆されています。
3. 程よい加減の亜鉛量とは?
亜鉛は、摂取量が多すぎても少なすぎても健康障害を齎す栄養素。通常の食事内容で過剰摂取になることはありませんが、サプリメントの多用などにより知らず知らずのうちに超過し、予期せぬ被害を未然に防ぐために、上限値も併せて確認しておきましょう。
3.1 推奨量と耐容上限量
推奨量は成人女性で8mg/日、成人男性では11mg/日。3個で概ね推奨量を賄えるほど、牡蠣は亜鉛を豊富に含む食材。日常的には、牛肉の赤身部分を食すことで、推奨量に到達しやすくなります。
耐容上限量は、成人女性で35mg/日、成人男性では40~45mg/日です。
3.2 過不足で発生する健康リスク
亜鉛の過不足により、どのような健康リスクが発生し得るのか、確認してみましょう。
3.2.1 亜鉛と味覚障害
甘辛酸苦鹹の味を感じ取るセンサーは舌の表面にある味蕾。味蕾を形成する上皮細胞に亜鉛が多く含まれています。そのため、亜鉛摂取量が大幅に低下している場合、味覚障害を来し味が感じ難くなるリスクが生じます。若年層の女性で多く見られる傾向。
3.2.2 亜鉛と家族計画
性ホルモンの合成や精子の生成とも深い関わりのある亜鉛。歴史の項でも述べた通り、亜鉛の欠乏は、男性の性腺機能低下との因果関係が明らかになっています。一緒に食事内容を確認してみるのも家族計画の上では大切な第一歩かもしれません。
その他にも、貧血との因果関係も明らかです。亜鉛欠乏により貧血を招く要因にもなる一方、逆に多く摂りすぎた場合も、亜鉛同様に赤血球の構成や運搬を担う鉄や銅と拮抗しあい、貧血症状を招くとも言われています。
とは言え、栄養バランスに大きな偏りがない限り、特に問題とはなりませんので、ご心配なく。
4. 亜鉛を効率よく摂るには?
亜鉛は、植物性、動物性の何れにも含まれていますが、植物性食品に含まれているフィチン酸は体内への吸収を抑制します。
効率性も考えるなら、野菜や豆類ばかりではなく、亜鉛を豊富に含みフィチン酸を含まない、貝類や肉類もバランス良く頂くことが推奨されます。
また、加工食品にはリン酸塩が含まれていることが多く、リン酸塩が亜鉛と結合することで吸収が阻害されると言われています。自分だけではなく、家族やパートナーの食事内容も一考してみると良いでしょう。
5. まとめ
ある日突然、「病気」や「気になる症状」として現れる事象の背景で、日々の食生活の傾向や積み重ねが引き金となっているケースが多々あります。
一方で、全ての事象を生活習慣の見直しと調整で解決できる訳でもなく、ライフスタイルに起因しない疾患も現実にはたくさんあります。
しかし、世界的に見て、死因の74%もが生活習慣病を含む非感染性の慢性疾患であるのも事実。
生活習慣病に至らずとも、予防できることは予防することに越したことはないのです。
【参考文献】
「ロス 医療 栄養科学大事典」
稲葉暢也・中屋豊 総監訳
西村書店
「元素118の新知識<第2版>」
桜井弘 編著
株式会社講談社
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