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山ガール・農業女子!人気アクティビティで注意すべきSFTSとは?

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山ガール・農業女子!人気アクティビティで注意すべきSFTSとは?

山ガールや農業女子などの呼び名が飛び交い、屋外活動を楽しむ女性が増えている昨今。

豊かな大自然の景観、森林浴によるフィトンチッド効果、日光浴によるビタミンD合成と、心身共に主な現代病を回避し、ストレス解消、リラクゼーション、メディテーション作用も有するなど嬉しい効果が満載の屋外アクティビティ。

一方で、屋外活動では、外傷だけではなく、昆虫や動物などの媒介による感染症への罹患というリスクも少なからず存在します。

同様に、屋外活動を経た同伴ペットと戯れることで感染するケースもあります。

春先から秋口まで多く見られる感染症の1つSFTSを例に、感染リスクを回避しながら、大自然を楽しむためのメソッドについて見ていきましょう。
 

目次


1. SFTSとは?
1.1 概要・疫学
1.2 マダニの種類
1.3 発生時期と感染経路
2. 感染症法による分類
2.1 感染症法とは?
2.2 感染症分類とSFTS
3. SFTSの予防
3.1 予防に適した服装
3.2 受診の目安
4. SFTSの治療
4.1 潜伏期間と症状
4.2 治療
5. まとめ

 
 
1. SFTSとは?
Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome、略してSFTS。

日本では、重症熱性血小板減少症候群と呼ばれ、フェヌイウィルス科バンダウィルス属に分類されるSFTSウィルスによるダニ媒介性感染症の1つ。

重症化によって死亡に至るケースも多くはありませんが存在します。

屋外アクティビティが増える新緑から紅葉の時期に気を付けたいSFTSについて、その概要や注意点について見ていきましょう。

1.1 概要・疫学
SFTSは、2011年に中国の研究者によって初めて症例が報告された新興感染症

この症例報告は、2008年から2009年に発生した原因不明の熱性疾患の調査結果に基づいたものですが、同様の症例は2006年にも発生していたことが後に判明。

調査を続ける中で、実際の初発時期は、更に時を遡った1996年、江蘇省のとある家族の治療に当たっていた医師から報告されていた原因不明の発熱や血小板減少を特徴とした症例と一致することが示唆されています。

SFTSは、中国・韓国・日本など東アジアを中心に、アジア全域で発生が認められており、動物由来で致死率が高く、重症例では出血症状を呈し、発症動物の血液や体液に触れることで感染することを特徴とします。

中国での発生報告件数は、2011年から2016年の5年間で5,630例。発生報告地域の内訳は、河南省・山東省・湖北省・安徽省・浙江省・遼寧省・江蘇省の7省からで99%を占有。

これらの省は、沿岸部に近接、または、その隣接省であり、限定的な地理背景を有する地域から多くの報告が見られます。

国内での発生報告件数は、関東以西でより多く、年間100件程度。発症に於ける男女差は認められず、発症例は60歳以上、年齢中央値は75歳、死亡例の年齢中央値は80歳と高齢者で発症と重症例が多く見られます。

一方、油断は禁物ですが、小児では、軽症例が多いことも特徴の1つです。
 
1.2 マダニの種類
SFTSウィルスはマダニによって媒介され、ウィルスを保有したマダニがヒトや動物を刺咬することで宿主にウィルスが伝播します。

SFTSウィルスの主な媒介者として最も有力なマダニは、フタトゲチマダニ

その他にも、国内に生息するキチマダニ・ヒゲナガチマダニ・オオトゲチマダニ・タカサゴキララマダニからSFTSウィルスが検出されています。
 
1.3 発生時期と感染経路
フタトゲチマダニの活動が活発化する春から秋にかけて、発症届出は5月と6月をピークに、次いで4月と7月に多く、10月まではピークアウトを認めず、冬季も含め、年間を通して発生が確認されています。

主な感染源はマダニですが、マダニに刺咬され宿主となったヒトや動物を介して感染する症例も少なからず認められています。

ペットとして同伴しているイヌとネコからの感染も確認されており、イヌではウィルス保有率40%、ネコでは60%と、宿主として、ネコがより高い感染源となり得ることが示唆されています。

また、動物での感染発生例は、3月から5月に多く、ヒトと比較して、やや早めの時期に発生する傾向が見られます。
 

2. 感染症法による分類
SFTSは、感染症法の全数把握対象疾患の1つであり、感染拡大のリスクが懸念される感染症です。

感染症法の概要、感染症法による疾患の分類、SFTSのリスクと分類について、具体的に見ていきましょう。

2.1 感染症法とは?
正式には「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」と命名、1999年(平成11)4月に施行された法律。

多様な感染症の蔓延や防止を目的として、1981年(昭和56)から開始された感染症発生動向調査は、感染症法に基づく施策として位置づけられており、該当する疾患を診断した医師、または、指定医療機関は、原則として、保健所を介して症例報告が義務付けられています。
 
2.2 感染症分類とSFTS
感染症疾患である病原体の感染力や罹患した場合の重篤性を5つに分類し、該当する疾患を診断した全ての医師による速やかな報告の義務が課された全数把握対象疾患と、発生動向調査は必要である一方で、患者数が多数で全数調査報告を要さない定点把握対象疾患があります。

全数把握が必要な感染症は、感染リスクに基づき、危険度が高い順に以下の5つに分類されています。

1類および2類感染症は感染力及び罹患した場合の重篤性からみた危険性が高い感染症

3類感染症は特定の職業へ就業することにより集団発生が懸念される感染症

4類感染症は動物や飲食物など主にヒト以外の媒介により感染拡大が懸念される感染症

5類感染症はインフルエンザや性感染症を始め蔓延や拡大防止措置が必要な感染症

感染拡大を防止することを目的とし、感染症の分類に基づき、通学や就業制限期間などが定められています。

SFTSは、全数把握対象疾患であり、4類感染症に分類。
 

3. SFTSの予防
屋外でのアクティビティが増える季節。SFTSへの罹患リスクを回避しながら、大自然を最大限に楽しむためのメソッドを見ていきましょう。

3.1 予防に適した服装
マダニ、特にフタトゲチマダニの活動が活発になる4月から10月にかけて発生が多くみられるため、この時期に河川敷、森林公園、草むら、藪などで活動する際には、マダニに刺咬されるリスクを回避するための準備が必要です。

第一の予防策として、マダニが刺咬する肌の露出を避けることが大切です。

露出を避けるために、長袖・長ズボンを着用し、着衣の隙間を塞ぐため、裾はズボンや靴下の中に入れ、袖は手袋で覆い、首元にはタオルを巻くなどの工夫が必要です。

また、マダニの付着を目視できるように明るめの色の衣服を身に着けることも得策。

帰宅前に、マダニが付着していないかを確認し、帰宅後には、入浴またはシャワーで体を洗い流すことも重要です。
 
3.2 受診の目安
吸血中のマダニに気づいた際には、マダニの体部や体液の残存を回避するため、無理に取り除こうとせず、皮膚科など医療機関を受診し、適切な処置を施してもらうことは感染を確実に防御するために重要であり、推奨されます。

また、マダニに刺された後は、数週間は体調の変化に留意する必要があり、発熱を呈する際には、皮膚科または内科を受診し、マダニ刺咬経緯を説明しましょう。

同様に、ペットが草むらなどのマダニが多発する生息地から帰館した際、発熱などの症状が見られる場合には、ペットからの刺咬、体液への接触を回避するためにマスクや手袋で自己を防御した上で、獣医を受診してください。
 

4. SFTSの治療
軽症、また、若年層では自然治癒するケースが多いSFTSですが、発症時の目安として症状や治療方法について見ていきましょう。

4.1 潜伏期間と症状
潜伏期間は1週間から2週間程度と比較的長く、初期症状として、発熱・倦怠感・頭痛などが見られます。

続いて、嘔吐や腹痛、下痢など消化器系の症状が多く確認されています。
 
4.2 治療
対症療法に限定されていたSFTSの治療法ですが、インフルエンザウィルスに対する抗ウィルス薬として用いられていたファビピラビル(アビガン錠)がSFTSに対しても効果が認められ、2024年6月24日に使用が承認されました。

一方で、当該薬を投与できる医師は、必要な研修を受けた専門医に限られており、治療や投与に際しては、十分な知識と経験を要する疾患の1つです。
 

5. まとめ
現在、発症件数は多発しておらず、軽症であれば、ほとんどは自然治癒に至る一方で、生息地域の拡大など変化も見られるSFTS。

しかしながら、アクティビティの内容に適した服装の装着と、活動後の適切な対応で十分に予防が可能な症候群であることに変わりはありません。

正しい知識と共に、ウェルネス効果が高い屋外アクティビティを存分に楽しみましょう。

 
【参考URL・資料】
国立健康危機管理研究機構
感染症情報サイト
https://www.niid.jihs.go.jp/

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/

重症熱性血小板減少症候群
SFTS : severe fever with thrombocytopenia syndrome
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