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【史上初】子どもたちの過体重が低体重を超過し世界を席巻する現代

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【史上初】子どもたちの過体重が低体重を超過し世界を席巻する現代

大人による政治経済的エゴイズムに端を発した紛争によって飢饉がもたらされ、ガザ地区など、世界の紛争地域で暮らす子どもたちは危機的な飢餓状態に陥っている一方で、世界をより広く見渡せば、早期死亡の原因ともなる肥満の割合は増加の一途を辿っています。

殊に、生活習慣に基づく、子どもの肥満割合の増加は顕著。

人口増加や自然災害、近年では紛争等の人災などによって飢饉に苦しめられた歴史を長らく有した人類にとって、史上初となる、子どもたちの肥満割合が低体重を超過する事態が、今や世界を席巻しています。

成人のみならず、子供たちの過体重及び肥満が増加している背景、肥満によって惹起される健康リスク、世界の肥満対策など、肥満を取巻く現状を概観し、ご家庭でも取り組み可能なアクションについて考えてみましょう。

目次


1. 世界を席巻する肥満
1.1 過体重及び肥満の定義
1.2 過体重及び肥満の割合
1.2.1 全人口に占める割合
1.2.2 成人期に於ける割合
1.2.3 小児期に於ける割合
1.3 地域偏在と格差
2. 肥満と健康リスク
2.1 肥満は早期死亡の要因
2.2 肥満が招く病気
3. 子どもと肥満問題
3.1 子どもたちを取巻く環境
3.2 肥満と健康リスク
4. 世界の肥満対策
4.1 ユニセフによる報告と推奨
4.2 各国政府による取り組み
5. まとめ

 
1. 世界を席巻する肥満

生活習慣病罹患者数の世界的な増加傾向に伴って、その最大要因でもある肥満者数も上昇しています。

今や世界を席巻する過体重と肥満について、全体像を確認しましょう。
 
1.1 過体重及び肥満の定義
成人の過体重及び肥満の区分として用いられる体格指数BMI : Body Mass Index ([体重kg] / [身長m]2)。

世界全体として過体重及び肥満傾向である一方で、その割合には地域偏在性が伴い、また、糖尿病や高血圧などの生活習慣病に罹患する割合は、肥満が最大要因である一方で、民族性に帰する背景も有しています。

これらの民族学的視点に基づき、欧米諸国の身体機能や症例をベースに作成されるグローバルスタンダードとは別に、国内では、日本人の特性を加味した4段階式肥満度を指標として採用。

WHOで提示されているグローバルスタンダードと日本肥満学会が公表している肥満区分による大きな違いは、過体重と肥満の境界域。

日本では、BMI25以上を肥満とし、以降、5加算毎に4段階に亘る肥満度区分が肥満への介入指標として用いられ、肥満度レベルや合併疾患の有無に応じて、予防策や治療方針が検討されます。

他方、世界では、BMI25以上30未満を過体重、BMI30以上を肥満と区分。

フランスに於いては、概ねBMI27以上及び基礎疾患の有無なども勘案し、予防及び医療的介入が検討されます。
 
1.2 過体重及び肥満の割合
米国などの工業技術先進国のみならず、世界全体として増加が顕著である過体重と肥満。

全人口及び年齢構成区分別に、肥満割合を見ていきましょう。
 
1.2.1 全人口に占める割合
2022年時点で、世界中で8人に1人は肥満に該当。

この割合は、1990年時点の2倍であり、思春期の子どもたちに占める割合としては、実に4倍にも上ります。
 
1.2.2 成人期に於ける割合
18歳以上の成人に於いて、世界の過体重及び肥満人口は、2022年時点で、前者に該当する人口は25億人、後者では8億9千万人が該当し、各々、成人人口の43%と16%を占める割合まで上昇。

過体重割合43%の性別による内訳は、男性43%、女性44%であり、性差による偏在は見られません。

現在、世界の約半数の人々は、過体重である現状が明らかとなっています。
 
1.2.3 小児期に於ける割合
世界全体で、5歳未満の幼児に於ける過体重の割合は、2024年時点で3,500万人。

2022年時点で、5歳以上19歳以下の未成年者に占める過体重人口は3億9千万人。この過体重人口には、全体の1/2強の割合を占める1億6千万人の肥満人口も含まれています。

過体重及び肥満の割合は、1990年の8%に対し、2022年時点では20%まで劇的な増加を遂げています。

性別による内訳は、男児19%、女児21%であり、成人同様、性差による偏在は見られません。
 
1.3 地域偏在と格差
1990年以降、過体重及び肥満人口は世界的に増加傾向であるという確たる事実が存在する一方で、国・地域による偏在も並行して見られます。

その一例として、過体重割合は、WHO南東アジア及びアフリカ地域に於いて31%、他方、WHOアメリカ地域に於いては67%にまで上っています。

上記の過体重割合が示すように、かつては、米国などの工業技術先進国に於いて顕著であった過体重人口は、今や、アフリカやアジア地域にも飛び火し、2000年以降、アフリカ地域では12.1%の増加率を示し、アジア地域では、2024年時点に於いて、5歳未満で過体重及び肥満を有する幼児の割合は人口の半数を占めるまでに至っています。
 

2. 肥満と健康リスク

衛生環境の改善、ワクチン予防接種抗菌薬の普及などによって、“怨霊”や“悪霊”による祟りと恐れられ、長い歴史の中で忌避されてきた死に至らせる感染症等は劇的な減少傾向をもたらした一方で、食習慣を中心とした生活習慣に基づく肥満は増加の一途を辿っています。

多くの病気を招く原因となる肥満。

肥満によってもたらされる健康リスクについて見ていきましょう。
 
2.1 肥満は早期死亡の要因
70歳未満で死亡に至る早期死亡の減少を目的とし、取組優先課題として掲げられている疾患として、非感染性疾患が挙げられています。

非感染性疾患の中でも、動脈硬化性心疾患及び糖尿病がクローズアップして取り上げられており、これらの疾患は何れも動脈硬化症を惹起し、心筋梗塞や脳梗塞を誘発させる背景には、肥満状態が潜んでいる事実を物語っています。
 
2.2 肥満が招く病気
生活習慣の調整不足を背景とした肥満によってもたらされる病気は多岐に亘りますが、主な疾患として挙げられる病気は、糖尿病・高血圧脂質代謝異常症・MASLD やALD 等の肝機能障害・閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)など。

また、これらの疾患の重症化、或いは、複数合併することによって、狭心症や心筋梗塞等の心血管疾患、脳梗塞等脳卒中、慢性腎臓病(CKD)及び腎不全、閉塞性末梢動脈疾患(PAD)、その他多くの疾患を惹起します。

更には、これらの基礎疾患を背景として、喫煙習慣も有することで、早期死亡を誘引する致死確率は確実に上昇します。

夏季に於いては、脂肪の集積によって皮膚からの熱放散が妨げられるため、熱中症にも罹患しやすい特徴も有しています。
 

3. 子どもたちと肥満問題

成人に於いて顕著である肥満割合の増加は、未成年者に於いても同様かつ急進的に拡大し、より深刻な問題となりつつあります。

かつては成人病と呼ばれていた生活習慣病の低年齢化も懸念され、早期発症や長期間に亘る罹患によって、疾病の拡大と予後の悪化、延いては、更なる医療費の負担増加と生産年齢人口に於ける疾病構造の変化に伴い、少子化が声高々と叫ばれている傍らで、国力の衰退も課題として表出してくる可能性は否めません。
 
3.1 子どもたちを取巻く環境
未成年者の間で、肥満割合が顕著に増加している要因とは一体何でしょうか。

様々なファクターが考えられる中、2大要因として考えられるのは、脂質や糖質成分を多く含んだ低価格で手軽に食すことが可能な超加工食品による市場の占拠と、仮想世界に没入し室内に閉じこもる遊びへの変化、自動車やエレベーターなど移動手段を自動運転に委ねること等によって生ずる運動不足。

また、塾通いに伴う夜間帯の飲食や睡眠不足、朝食の欠食、加糖飲料への嗜好、伝統的な和食と比較し脂肪分が豊富な米国を中心とした食文化への傾倒が、これらの2大要因に加え肥満傾向を加速させる要因であると言えるでしょう。
 
3.2 肥満と健康リスク
学童及び思春期にある未成年者に於ける肥満人口は、2022年時点で1億6千万人であったのに対し、最新のユニセフによる報告では、1億8,800万人にまで増加しており、今や、10人に1人の児童及び学生が肥満に該当していることが判明。

現在では、サブサハラ・アフリカと南アジア以外の全ての地域に於いて、肥満割合は低体重割合を超過しています。

過体重や肥満によってもたらされる健康リスクとして、成人と同様に、インスリン抵抗性や血圧の上昇を惹起し、将来的に、2型糖尿病や高血圧、一部のがんの発症を誘引することが挙げられます。

更には、成人後期での発症と比較し、長きに亘るインスリン抵抗性や血圧の上昇は、動脈硬化を促進し、動脈硬化の状態が長期間に亘り持続することによって、著しい血管の劣化も懸念され、脳心血管疾患に至るイベント発症の低年齢化及び発症回数の増加、長期間に亘る服薬管理の必要性が生じる等、望まぬ事態を招いてしまうリスクが懸念されます。
 

4. 世界の肥満対策

世界共通の課題である肥満人口の増加。

殊に、子どもたちの肥満傾向は顕著であり、ユニセフをはじめ、世界各国の政府は予防戦略を立て施策展開を図っています。最終章では、ユニセフからの推奨と各国の肥満対策施策について見ていきましょう。
 
4.1 ユニセフによる報告と推奨
ユニセフにより提示された最新の報告は、子どもの肥満の要因として、超加工食品によるマーケットの席巻など、収益性を勝敗の指標とし、勝ち続けることに重きを置く、経済を最優先にしたマーケティングや広告戦略を背景にした市場経済が誘引している実態を明らかにしています。

これらの事実を鑑み、ユニセフは、各国政府及び市民、市民団体に対し、以下の取り組みを緊急的に実施すべきとして推奨しています。

1) 食品ラベル表示・食品産業界のマーケティング規制・超加工食品への課税

2) 家庭及び地域で取り組む食選びへの行動変容

3) 教育機関に於ける超加工食品及びジャンクフードの販売、マーケティング、スポンサーシップの禁止

4) 超加工食品産業界からの企業献金等規制

5) 全ての家庭が栄養価の高い食品を享受できる社会システムの構築と強化
 
4.2 各国政府による取り組み
ユニセフは各国政府に対し、こどもの肥満対策として5つの緊急的施策を提案していますが、世界では、既に先進的な取り組みを実施している国々が存在します。

先行事例を見ていきましょう。

飽和脂肪の多い高エネルギー食品への課税によって成功を収めているのは、デンマーク、エチオピア、ハンガリー、メキシコ、トンガ等が挙げられ、元来、畜産業が盛んで、高い肥満人口割合を有していた国々です。

過体重が人口の半数を占めるコロンビアでは、肥満対策としてジャンクフード税を取り入れた最初の国。

マレーシアでは、加糖飲料を含む超加工食品に対する課税で得た税収を、小学生を対象に無料で健康的な朝食を提供する費用として充当しています。

これらの先行事例に見られるように、現行では、肥満と因果関係が強い、ジャンクフードや加糖飲料を含む超加工食品に対する課税を肥満対策として取り入れている施策が多く散見。

公衆衛生機関を中心とした肥満対策の世界的動向として、温室効果ガスの削減も鑑み、動物性から植物性の食品へシフトするための補助金制度の在り方も検討され始めているのが最新の政策動向です。
 

5. まとめ

広く世界を見渡せば、緊急的な飢餓状態を余儀なくされ、生命の危機に瀕している子どもたちがいる一方で、世界規模では、かつてない程の肥満人口の増加によって、生活習慣病や合併症の発症及び罹患期間の延伸による健康寿命の短縮が懸念されています。

目下、日本が於かれている現状は後者。

これら全ての望まぬ事態を招いているのは、大人の都合による無責任な経済を最優先にした営利一辺倒の商品開発と販売目標。

他方、日本では、20代を中心とした若年層の女性に於いて、痩身願望による瘦せ型人口の増加も問題視されています。

事実、貧血症状を有する女性の割合が多く、また、出産時、低出生体重児の割合も増加しており、逆説的に、低出生体重児に於いて、将来の生活習慣病罹患率が高まるとの調査結果も報告されています。

世界各国、日本国内に於いても、相反する課題が山積する混迷の時代。

食糧難を克服した今、国内自給率も含め、国としては新たな課題を抱える事態を招いていますが、私たち一人ひとりが消費行動を変換し、農作物等の栽培方法や食料品供給体制に対する知見も深めることで、私たち自身だけではなく、次世代の健康状態も良好に維持できるように繋いでいくことが可能になるのではないでしょうか。

 
【参考URL・資料】
WHO
https://www.who.int/

UNICEF
https://www.unicef.org/

JICA
「グローバルヘルス2050
今世紀半ばに向けた早期死亡半減への道筋 (日本語版)」

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