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EU・フランス発!消費者を健康へ導くニュートリ・スコアとは?

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EU・フランス発!消費者を健康へ導くニュートリ・スコアとは?

世界共通の課題となっている肥満を背景とした生活習慣病の増加。

かつて「成人病」と呼ばれていた生活習慣病は、今や、子どもたちの間でも肥満が蔓延し、低年齢化の兆しも取り沙汰されています。

WHOによる警告にも後押しされ、肥満を主因とした生活習慣病、および、その重症例として、脳心血管疾患に対する様々な予防策が世界各国で展開されています。

その予防策の1つとして注目されているのが、フランスで開発され、欧州連合加盟7か国で運用されているニュートリ・スコア

その施策内容と展開方法を考察し、ステークホルダーによる賛否両論にも触れながら、食品を選択する上で大切なポイントとは何かについて、具体的に考えてみましょう。

目次


1. ニュートリ・スコアとは?
1.1 法的根拠と導入目的
1.2 ニュートリ・スコアの概要
1.3 ニュートリ・スコア導入国
2. 食の安全も守られる?
2.1 ラベルの効果とデメリット
2.2 ステークホルダーによる賛否両論
3. イタリアによる反対論
4. 食の選択で大切なポイント
5. まとめ

 
 
1. ニュートリ・スコアとは?

1.1 法的根拠と導入目的
2011年、EU欧州議会によって制定され、公布に至った「食品の消費者向け情報提供規制」は、容器包装に記載されるべき食品情報の定義が盛り込まれ、情報提供のあり方に一定のルールを設けた規制です。

容器包装背面への記載義務が課された栄養表示項目は、熱量、脂質、飽和脂肪酸、炭水化物、タンパク質、糖類、食塩相当量の7項目

同時に、その内容を「容器包装前面にもラベルとして貼付することが望ましい」と推奨されました。

当規制が公布された背景として、欧州連合加盟国に於ける肥満人口の拡大と、それに伴う生活習慣病有病者数の増加が挙げられます。

当該課題を克服することを主目的として、容器包装背面に記載された詳細にわたる栄養表示内容を、一瞥で理解可能なロゴなどへ内容を転換し、容器包装前面にも表示することで消費者の理解を促し、予防行動へ繋げることを目標としています。

規制に則り、フランスの厚生労働省に該当する連帯・保健省と公衆衛生当局主導下で開発が進められ、2017年にリリースされたラベルが「ニュートリ・スコア (Nutri-Score) 」です。
 
1.2 ニュートリ・スコアの概要
ニュートリ・スコアは、生活習慣病の発症要因となる主な栄養素を、ポジティブ要素とネガティブ要素に分類し、商品に含有された各栄養成分をアルゴリズムに則って評価しスコアとして算出したもの。

商品全体としての評価を緑、黄、赤のグラデーションで色別されたA, B, C, D, Eの5段階で容器包装前面に表示。

代表的なポジティブ要素とネガティブ要素として、各々、食品100gまたは100mLあたりに含まれる、前者として、食物繊維・タンパク質・野菜・果物・豆類・ナッツ類など、後者として、熱量(カロリー)・飽和脂肪酸・糖類・食塩相当量・飲料に含まれる着色料・砂糖などの代替品として用いられている人工甘味料が挙げられています。

糖分や塩分といったネガティブ要素として換算された原料の含有量が多い食品のスコアは、総じて、橙色と赤色で表示されたDやEに該当。

容器包装の背面に義務的に記載されている栄養表示内容については、欧州連合加盟国内で統一されている一方で、前面に表示されるラベル様式は一様ではありません。

理解を促進し、消費者の混乱を回避するために、前面のラベル表示様式も統一されるべきという欧州連合議会の見解を下に、スコア化の明確なアルゴリズムを有し、かつ、デザイン性にも優れた「ニュートリ・スコア」の導入が欧州連合加盟各国で進んでいます。
 
1.3 ニュートリ・スコア導入国
フランスで開発され、2017年にリリースされたニュートリ・スコアは、翌2018年、ベルギーとスペインの参入を皮切りに、2025年現在、スイス、ドイツ、ルクセンブルク、オランダを加えた7か国で運用されています。
 

2. 食の安全も守られる?

2.1 ラベルの効果とデメリット
ニュートリ・スコアのアルゴリズムには、肥満や生活習慣病予備群に対する改善効果が既に認められている栄養成分がスコア算出の指標として用いられています。

よって、含有する添加物に対する評価までは行われていないのが現状であり、表示されているラベルの内容は、食の安全性まで包括して保証しているものではありません。

他方、欧州では、予防原則による消費者視点に立った添加物規制も盛んに行われており、かつ、将来的には、ニュートリ・スコアのアルゴリズムにも添加物内容も加味した算出方法を開発する意向も既に示されています。

ステークホルダーとの議論やアルゴリズムの改良も重ねられ、各国の健康特性や食文化にも配慮した、建設的な取り組みが繰り広げられています。

2.2 ステークホルダーによる賛否両論
消費者団体や医療界などから概ね高評価を博しているニュートリ・スコア対し、以下のように、否定的な反応も見られます。

有機栽培、地理的表示保護、伝統食、無添加、加工度が低いといった特定の栄養素以外での長所を有しているにも関わらず、含有する糖分や食塩量によってDやEに振り分けられることは、伝統文化の喪失に繋がるとしてネガティブな見解が示されています。

また、Aが緑色、Cが黄色、Eが赤色と信号とリンクした表現となっているために、健康リスクと食品が単純に関連付けされ、画一化されたラベル表示により、チーズなど、実際には栄養価も高く高品質な食品に対しても消費行動が抑制されることが懸念されています。

また、価格競争に晒される市場に於いて、ラベル表示の基準に則った商品開発は、大企業など資金力を有する製造・販売元によって優位に展開され、中小企業などにとっては、機会損失に繋がるとの批判の声も根強く残っています。
 

3. イタリアによる反対論
地中海食が食文化の基盤となっているイタリアでは、自国の食文化を守ること、また、画一単純化された指標および評価方法を用いるニュートリ・スコアはミスリードを招き兼ねないという反論を盾に、独自の食品表示指標であるNutrInform Batteryを同国保健省主導により開発。

脂質、飽和脂肪酸 、糖類、食塩相当量の4項目および熱量と1日の食事摂取基準に占める割合%を表示し、解釈および評価は加えていない表示内容が特徴です。
 

4. 食の選択で大切なポイント
本来、食の選択で最も重要な背景として挙げられるのは、環境保全と食の安全の確保です。

食料品の元となる農作物や畜産物は、自然の恵みを受けた大地で育まれ、土壌、大気、水質が健全な状態にあることで良質な農畜産物が実ります。

PFASのように生態系に悪影響を及ぼす化学合成物質の排出は、肥沃な大地を不健康なものに作り替えてしまうことが昨今の研究調査で明らかにされています。不健康な環境下で滋養豊かな農産物は実りません。

また、ネオニコチノイド系農薬や除草剤は、生物多様性や私たちの健康にも悪影響を及ぼしかねません。

生態系の維持、環境保全と食の安全は第一義的に守られるべき重要なポイントです。

次のステップとして、大切なポイントは、食材そのものに対する私たちの関心

地理的条件を含む、土壌、大気、水質の健康度が高い土地で育まれた農作物は栄養価も食味も高いという科学的分析結果もあります。

動物にとってストレッサーとなる環境要因を極力回避し、良質な飼料で育てられた健康的な畜産物は風味豊かであるとして、ミシュランで星を獲得するなど高評価のレストランでも食材として取り入れられています。

無農薬や有機農産物の耕作地が拡大されることで、環境保全にも寄与し、私たちの健康にもポジティブな影響を齎します。

加工度の低い伝統食や地理的表示保護の対象となる食材は製造過程が明確であると共に、食を中心とした地域文化や風土への関心、地産地消や地域間交流を促進する好循環を生み出す可能性も秘めています。

これらの要素を、幼少期から家庭や教育機関、地域で途切れることなく育み続ける「食育」の概念を盛り込んだ取り組みが社会生活を営む各段階や領域で行われることが理想的であり、生活習慣病に代表されるような疾患を予防できる術も自然と身につくものと考えられます。

一方で、目まぐるしく変化する社会情勢や労働環境の中で、理想ばかりに徹した食行動の追求には困難を伴うことも想起されます。

理想への過度な傾倒による疲弊を回避するためにも、また、肥満の増加を社会的背景として、仕事と家庭生活を両立させながら子育てに勤しむ親にとっても、子ども自身が商品を手にする際にも、一目で分かりやすいニュートリ・スコアに代表されるEU方式の健康課題解決型の食品表示のあり方は、時間的制約がある中で、買い物をしながら自然と知識も習得することが可能な好機ともなるのではないでしょうか。
 

5. まとめ
食を楽しみ、嗜好し、選択する自由は各々に託されています。

他方、より良い心身を形成するためには、より良い情報を取得し活用することが最善策ともなります。

私たちの身体を形成し、活動の基盤となり、心にも影響を与える食品は、生きる糧として必要であると共に、どのような食品を選択し体内に取り入れるかは、私たちに課せられた最も大切な日常行動の1つでもあります。

私たちの健康は、知らず知らずのうちに、マーケティング戦略によって蝕まれている可能性は無いのでしょうか。

日ごろから、食品表示には目と心を配りたいものです。
 
【参考資料】
日本貿易振興機構(ジェトロ)パリ事務所
農林水産・食品部 農林水産・食品市場開拓課
「欧州におけるNutri-Score制度をはじめとした容器包装前面表示制度(FOPL)に関する議論の動向調査」
2022年2月

Update report from the Scientific Committee of the Nutri-Score 2022
「Update of the Nutri-Score algorithm」

Santé publique France
「Nutri-Score : le point sur les nouveautés 2024」
「Nutri-Score」 Mis à jour le 14 mars 2025
 

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