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【終戦80年平和の祈】核爆発が身体・精神・環境に及ぼす甚大な影響

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【終戦80年平和の祈】核爆発が身体・精神・環境に及ぼす甚大な影響

遡ること、今から80年前。

1945年8月、真夏の太陽と共にいつもと変わらぬ朝を迎えた広島と長崎。

聞きなれぬ爆音を耳にし、ふと頭上を見上げると、青空には真っ赤に輝く火の玉。

スーッと地に向かって降り注いできたと思った、その瞬間、閃光と爆音と共に大地は揺れ動き、成人の体さえ宙に浮かす程の驚異的な威力。

数分前までそこにあった日常風景は、真っ赤な炎に包まれ、瞬く間に焦土と化しました。

世界で、未だかつて誰も経験したことの無かった、広く市民をも巻き込む殺傷能力を有した爆弾が投下された瞬間です。

現在、紛争の無い日本で暮らす私たちにとって、ロシア軍によるウクライナ侵攻やイスラエル軍によるガザ地区への攻撃など、何か、「遠い異国で起きている痛ましい出来事」のように感じてしまいがちですが、80年前には、その当事者側でありました。

瞬時に命を奪うだけではなく、被爆後障害、社会的偏見など、生きながらえても苦しめられる現実。

核爆弾投下によって、日本人の心身、そして、環境はどのように破壊されたのでしょうか。

苦しみと悲しみの中から立ち上がり、復興と成長を遂げた先人たちへ感謝を捧げながら、戦争による被爆国の国民として、世界平和への思いを抱きつつ、核爆発の脅威を振り返ってみたいと思います。
 

目次


1. 1945年世界初核爆弾投下
1.1 広島8月6日
1.2 長崎8月9日
1.3 終戦8月15日
2. 核爆発と核兵器
2.1 核爆発の原理
2.2 核兵器の概要
3. 被爆による甚大な影響
3.1 線量と距離の危険範囲
3.2 人体への影響
4. 核兵器撤廃に関わる条約
4.1 核拡散防止条約
4.2 核兵器禁止条約
5. まとめ | 聖母と終戦の平和

 
1. 1945年世界初核爆弾投下

核兵器は、米国の物理学者ロバート・オッペンハイマー氏の指揮下で、第二次世界大戦の最中であった1940年代に開発は急ピッチで進められ、1945年7月16日、トリニティ実験と名付けられた人類初の核実験は成功を収めました。

通常の爆弾と比較し、1,000倍以上もの威力を有する世界初の核爆弾は、敵国であった日本の2都市、広島と長崎の上空から投下されることが決定。

1945年8月、身重の妊婦、あどけない表情で草地を駆け周る幼き子どもたち、老若男女問わず、罪なき多くの市民を巻き込み、広島と長崎を舞台に繰り広げられた惨状とは、一体どのようなものだったのでしょうか。
 
1.1 広島8月6日
午前8時15分、当時、人口32万人であった晴天の広島市上空から、人類史上初となる核爆弾が米軍爆撃機B-29より投下されました。

上空600メートルに於ける核爆弾の威力は、普通自動車1万6,000台分の重さに相当するトリニトロトルエン(TNT)火薬を同時に爆発させた威力と同等レベルである16キロトン。

爆心地から250メートル以内では、生存可能性は皆無の破壊力。

爆心地から半径2キロメートル範囲で街は壊滅状態となり、即死者も含めて、同年の年末までに死者数は14万に上りました。

一方で、爆弾投下直後に堅牢な建造物の屋内、殊に、地下室で作業を行っていた市民の中には、爆心地から500メートル圏内の近距離に於いて、負傷を伴いながらも生存が確認されています。

池や川にいた生物も死滅。核爆弾投下後約1か月間で雨水中の泥質から検出された放射線量は、自然界に存在する放射線と比較し、50倍もの高さ。

生きながらえた方々の中でも、その後数年から数十年の間に、白血病を始めとした胃がんや乳がん等のがんを患い、死に至った方も多く発生しました。
 
1.2 長崎8月9日
当初、北九州市小倉地区へ爆弾投下予定で旋回していたB-29爆撃機は、視界不良により投下目的地を、当時、人口24万人であった長崎市浦上地区へ変更。

午前11時2分、快晴無風の中、核爆弾は投下されました。

20キロトンの核爆発威力を有する爆弾は、浦上地区の中心である松山町上空550メートルで爆裂。

核反応から生じた高温高圧の気体は、瞬時に辺り一帯の物体を吹き飛ばし真空状態と化した爆心地では、物体は上空に吸い上げられ、炎が舞い上がる灼熱の大地に叩きつけられて粉砕。

平穏な快晴無風の朝を迎えた長崎市は、爆煙と土煙によって太陽光線は遮られ、一時暗闇と化し、死者数は7万人に上りました。
 
1.3 終戦8月15日
正午。

昭和天皇がポツダム宣言受諾によって太平洋戦争(第二次世界大戦)が終戦を迎えたことを日本放送協会(現NHK)のラジオ放送を介して全国民に宣べ伝えた「大東亜戦争終戦に関する詔書」通称、玉音放送。

天皇による詔では、常に国民の平穏と繁栄の分かち合いに思いめぐらせ願っていること、対戦に際し最善を尽くしてくれたことへの感謝、今後被るであろう苦難と生活再建への道のりに対して深く心を痛めていらっしゃること、内部分裂することなく国民が平和の内に一致団結し復興に臨むことへの希望が述べられています。

また、残虐な新兵器によって、むやみに罪のない人々を殺傷し、その悲惨な被害が及ぶ範囲は想像を絶するまでに至っており、戦争を継続することで、日本国民族の滅亡だけではなく、人類の文明をも破壊させ得ることを懸念し、終戦を宣言。

玉音放送を前にし、敵国によるデマであると罵る軍人の声、泣き喚き、すすり泣きが入り混じる中、敗戦による無力感と共に、平穏な日常へ戻る道筋が示されました。
 

2. 核爆発と核兵器

大きな被害をもたらした核兵器使用による爆撃と脅威。その原理と概要について見ていきましょう。
 
2.1 核爆発の原理
核爆発は、原子の中央に位置する核の反応から生じたエネルギーを、瞬時かつ大量に、限定されたスペースに放出することで発生。

核反応から生じたエネルギーは、高温高圧な気体となり、急激に膨張することによって周囲の空気や物体を非常に強い力で圧迫するため、周囲に甚大な影響を及ぼす衝撃波と呼ばれる熱風圧を巻き起こします。

核爆発で生じた大量の初期核放射線は、周辺電子機器にも故障の原因をもたらすと共に、細胞を構成する化学結合を分離する能力も有しており、健康障害ももたらす事態に発展します。
 
2.2 核兵器の概要
ウランやプルトニウムの核分裂を連鎖反応的かつ瞬時に発生させることによって得られた膨大なエネルギーを一気に放出させる装置が核兵器。

核分裂によって、ウランやプルトニウムは2つに分割され、高いエネルギーと透過性を持つガンマ線と中性子が発生。

広島では、核分裂物質としてウラン235が用いられ、長さ3メートル、直径0.7メートル、重さ4トンの形状を有した、通称「リトルボーイ」が核兵器として投下。

長崎では、核分裂物質としてプルトニウム239が用いられ、長さ3.25メートル、直径1.52メートル、重さ4.5トンの形状を有した、通称「ファットマン」が核兵器として投下されました。
 

3. 被爆による甚大な影響

核兵器によってもたらされた核放射線は、人体や周囲の環境にも甚大な悪影響を及ぼします。

影響の大きさは、放射線量や爆心地からの距離など、物理的要因によっても変化。また、人体への影響では、被爆部位や範囲、内部被爆または外部被爆かの違いによっても左右されます。

致死的事例も含め、どのような影響が確認されているのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
 
3.1 線量と距離の危険範囲
放射線の実体は、運動エネルギーを有して空間を飛び回る基本粒子。ガンマ線やX線のように光の性質を持ったものと、アルファ線やベータ線のように粒子の性質を持ったものに大きく分類されます。

線量を表す単位であるシーベルト(Sv)は、人体が吸収したエネルギーの量を体重1kgあたりで換算した値。

一般病院または専門病院を受診する必要がある危険な線量の水準は、被爆した方の半数が60日間内に死亡に至る可能性と白血病などの被爆後障害の発生が懸念される4シーベルト以上。

4シーベルト以上の被爆可能性が示唆される症状は、被爆後1時間以内に発症する下痢を伴うこと。

下痢症状が見られなければ4シーベルト以下であり、妊婦以外の方は医療機関での早急な対応は要しません。

一方で、被爆から10分以内に嘔吐、1時間以内に激しい下痢と意識不明の症状を呈した場合は、100%死亡に至る8シーベルトの被爆を受けたことが示唆されます。

広島および長崎と同等の空中爆発による放射線災害は、概して、爆心地より半径2キロメートル圏内で発生していることが確認されています。
 
3.2 人体への影響
被爆に伴う症状は、即死の他、嘔吐や下痢症状等を伴う急性放射線障害の他、後年、白血病や胃がん、肺がん、乳がんなどの固形がんの発症が見られます。

最も発症数の多い白血病では、発現ピークは被爆後6-7年目。

被爆に伴う症状や疾患は、線量や爆心地からの距離、被爆者の身体状況、被爆部位によって発症時期が異なるため、予断を許しません。

このように、心理的負荷が大きくのしかかるストレスフルな環境下に於かれることで、被爆に伴う症状や疾患だけではなく、不随する病に倒れる可能性も懸念されます。
 

4. 核兵器撤廃に関わる条約

2025年1月現在、核兵器保有国は、米国、ロシア、英国、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9か国。

核保有数は、2025年1月時点で12,241と前年と比較して164減少と報告されています。核保有割合では、約90%を米露で占有しており、核兵器開発も当該2国によって強力に推し進められてきた歴史を有します。

生体にも環境にも甚大な損害をもたらす核兵器。

世界の秩序と平和を護るために、既に保有している国への執行防止、新たな開発防止、核兵器の放棄を求める条約について概要を見てみましょう。
 
4.1 核拡散防止条約
核不拡散、核軍縮、原子力の平和的利用を目的として1970年3月5日に発効された条約。

1967年1月1日前に核兵器その他の核爆発装置を製造し、かつ、核実験を行った米国、ロシア、英国、中国、フランスの5か国を「核兵器国」と定め、他国への開発指導や転売禁止を盛り込んだ内容。

2021年5月時点で、締約国数は191か国・地域。非締約国はインド、パキスタン、イスラエル、南スーダンの4か国及び非公開の北朝鮮も保有国であると考えられています。
 
4.2 核兵器禁止条約
核兵器禁止条約は核兵器を全面的に禁止する初の国際法であり、核兵器の開発・実験・生産・貯蔵・使用・使用の威嚇や、核兵器を自国の領土に配備することを禁止しています。

2017年7月7日に国連加盟国の6割を超える122か国の賛成により採択。2020年10月24日に批准国が50に達したことで、2021年1月22日に発効しました。

2024年10月11日にノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が、自身らの体験を元に、戦中戦後の長きに亘る核兵器による心身及び人権への脅威、そして、核なき平和への道のりを希求し続けてきたアクションが、平和への第一歩となる条約発効として結実しました。

一方で、いわゆる先進国と目される国々による批准は行われておらず、唯一の戦争被爆国であり、核兵器禁止に於いてリーダーシップを発揮すべき日本も、不透明な北朝鮮の核保有の脅威に接していることを主な理由として、当該条約への参加を見送っています。
 

5. まとめ | 聖母と終戦の平和
8月15日、日本に於いては、「終戦記念日」であると共に、世界では、フランスを始めとした国民の半数以上がカトリック信徒が占める国々では、「聖母の被昇天」の祭日として祝われています。

長崎市の爆心地に程近い場所に位置し、東洋一の荘厳な美を誇り、聖母マリアに捧げられた浦上天主堂は、ほぼ全壊の壊滅状態。

一方で、正面入口に設置されていた聖母マリアと聖ヨハネの石像は無傷で残り、大祭壇上にあったスペイン渡来で木造の聖母像は被爆したものの現存。

被爆の聖母像は、ヴァチカン市国や国連本部を平和の使者として巡りました。

浦上天主堂には、250年もの間、異教徒として凄まじい迫害を受けてきた信徒らが集い、1945年8月9日の核爆弾投下時も、聖母の被昇天に向けた準備などのために集っていた神父や信徒らは爆撃により即死。

信徒らは、2度にもわたる大きな被害を受けたにも関わらず、信仰を棄てることなく、核爆弾の開発を指揮したオッペンハイマーが後年、良心の呵責と自責の念に苛まれたことを聞かされると、氏の魂の安寧を願い祈ったと言われています。

終戦から80年を迎える前年の2024年10月11日、被爆がもたらす悲惨な現実と平和の大切さを国内外に訴え続けてきた日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞しました。

現在、紛争の無い、平和な時代に生きている私たち。80年前、日本の国土は戦禍と化していたとは到底想像もつきません。

UNICEFの報告によると、現在、ハイチ、ミャンマー、パレスチナ、スーダン、ウクライナを筆頭に、世界各地で、6人に1人の割合で子どもたちは、想像を絶する暴力が蔓延る紛争地域での生活を余儀なくされています。

紛争地にいち早く平穏な生活が戻ること、私たちが受けている平和の恩恵を次世代にも橋渡しすること、そして、被爆国の国民として、多大な脅威をもたらす核兵器の廃絶を国内外に伝える役割を担うことができますように共にお祈りできましたら幸いです。
 
【参考文献・URL】
「長崎の鐘 付:マニラの悲劇」
 永井隆 著 勉誠出版

「核爆発災害」
 高田純 著 中公新書

宮内庁
https://www.kunaicho.go.jp/

外務省
https://www.mofa.go.jp/

世界平和拠点ひろしま
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/

ながさきの平和
https://nagasakipeace.jp/

浦上天主堂
https://uracathe.sakura.ne.jp/

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