肥満を背景とした生活習慣病有病率の増加に伴い、予防策の1つとして打ち出されたフランス発のニュートリ・スコア。
同様に日本でも、食選択のための適正な情報提供と予防行動を促す仕組みとして、保健機能食品制度や栄養成分表示が運用されています。
フランスで開発され、現在、EU欧州連合加盟7か国で運用されているニュートリ・スコアと日本の食品表示に関わる制度の変遷とを比較し、食選びに関する課題と留意すべき項目について見ていきたいと思います。
目次
1. 保健機能食品制度とは?
1.1 概要
1.2 導入目的
1.3 保健機能食品制度の見直し
2. ラベル表示で健康をサポート
2.1 特定保健用食品とは?
2.1.1 トクホ
2.1.2 栄養機能食品
2.1.3 機能性表示食品
2.2 表示効果とデメリット
3. 食品表示と透明性
3.1 栄養成分表示
3.2 栄養強化表示
4. EU発!ニュートリ・スコア
5. まとめ
1. 保健機能食品制度とは?
1.1 概要
保健機能食品制度とは、2001(平成13)年4月1日に施行された改正食品衛生法施行規則に応じて制定された健康食品のうち、一定の条件を満たす商品を「保健機能食品」と称して販売を許可する制度です。
審査を経て国の許可を得る必要性の有無と食品の目的・機能等の違いによって「特定保健用食品」と「栄養機能食品」の2つのカテゴリーに分類されています。
1.2 導入目的
健やかで心豊かな生活を送るための重要な要素の1つとして、バランスの良い食選びを掲げており、消費者が食品の特性を十分に理解し、健康上の被害がもたらされることのないよう、安心安全な環境下で食品を選ぶことを支援する目的で創設。
1.3 保健機能食品制度の見直し
保健機能食品制度の制定後、肥満や生活習慣病の増加などを背景に、健康課題を克服することを目的とした商品の開発が多くの消費者から求められ、支持されるようになりました。
一方で、疾病予防や痩身効果など、誇大表現を用いる商品が市場に浸透し始めていた社会情勢下に於いて、消費者が正しい情報を基に適切な商品を購入し活用できることを目的として制度の見直しを検討。
2005 (平成17) 年1月31日の健康増進法施行規則の一部改正を皮切りに、食品衛生法施行規則及び栄養表示基準の一部改正が公布され、現状に沿うよう、特定保健用食品制度および栄養機能食品制度が見直され、翌日2月1日から改正された保健機能食品制度が施行されるに至っています。
2. ラベル表示で健康をサポート
2.1 特定保健用食品とは?
特定保健用食品は、1991 (平成3) 年に制度化されたもので、栄養改善法第に規定される特別用途食品の1つ。
通称トクホと呼ばれる特定保健用食品は、「お腹の調子を整える」など、医薬品には準じないものの、一定の健康課題を解決に導きサポートする作用を有する成分を含む食品全般と指し、科学的根拠による評価基準の違いにより、トクホ・栄養機能食品・機能性表示食品に3分類されています。
2.1.1 トクホ
表示内容に関する成分の有効性を科学的根拠に基づき国が審査し、消費者庁長官により保健用途の表示が許可された食品であり、ヨーグルトなどの商品に印字された許可マークで確認できます。
2.1.2 栄養機能食品
カルシウムに対する「骨や歯を形成に必要」など、既に科学的根拠が定説化している栄養成分を含む食品に関して、その栄養成分が基準値範囲にある限り、国が認めた表現をキャッチフレーズとして表示することが容認されている、特段、届出は不必要である食品。一般的に、サプリメントと呼ばれている商品が該当します。
2.1.3 機能性表示食品
2015 (平成27) 年4月1日に施行された食品表示法令下で「機能性表示食品」として新たに創設され、事業者による責任の下、栄養成分に関する科学的根拠に基づき、販売60日前までに消費者庁長官に届出を行った商品。
有効性に関する科学的検証は経ておらず、特段、消費者庁長官による許可を受けた商品でもありません。
一昨年、健康被害をもたらした、特定成分の保健効果を謳った某企業のサプリメントも機能性表示食品に該当。
2.2 表示効果とデメリット
消費者が各々持っている健康課題を改善するために、配合成分と効果を分かり易く表示し実生活に役立てることをサポートする役割を担う一方で、表示内容に対する信憑性、誇大表現の可能性が示唆されるケースなど、商品の有効性自体にも疑念が残り、不確かな効果と健康への悪影響も生じる恐れがあることがデメリット。
また、トクホに関しては、信頼性も担保され、分かりやすい表示である半面、栄養成分の有効性以外にも添加物使用の有無などについては、各自で追加検討が必要な事項はあるため、「目安の1つ」として有益な情報であると言うスタンスを保ち、活用することが良いのではないでしょうか。
3. 食品表示と透明性
3.1 栄養成分表示
かつて、食品表示に関わる法律は、食品衛生法・JAS法・健康増進法の3法に跨り、各々異なる目的を基盤とし存在していました。
複雑化し理解を妨げる食品表示に関わる関連法規を統合し、「食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会の確保」を最終ゴールと定めた食品表示法が2013 (平成25) 年に施行され、2015年 (平成27) 年に具体的な表示ルールを食品表示基準として規定。
加工食品には、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量で表示)の5項目が栄養成分表示として必須であり、表記が義務付けられました。
生活習慣病とも関連が示唆される「飽和脂肪酸と食物繊維」の表記は推奨項目として、「糖質および糖類・コレステロール・多価脂肪酸・ビタミン・ミネラル」は任意表示項目とされています。
3.2 栄養強化表示
従来品との比較に用いる「減塩」「ノンカロリー」など栄養成分の含有量や内容を強調した表現を用いる際には、各々の栄養成分および熱量に対する基準値を満たしていること、かつ、測定や算出も定められた方法を用いなくてはならないという決まりが設けられています。
4. EU発!ニュートリ・スコア
フランスの連帯・保健省および公衆衛生当局主導で開発され、現在、フランス・ベルギー・スペイン・スイス・ドイツ・ルクセンブルク・オランダの7か国で導入および運用されているニュートリ・スコアは、独立行政機関である政府間運営委員会によって創設されたニュートリ・スコア科学的評価委員会によって経年的に再評価およびアルゴリズムの修正が行われています。
ニュートリ・スコアの改善点として挙げられていた、添加物内容も包含する評価方法の早急な確立に関しては、飲料品の着色料を評価対象としてアルゴリズムの改善が行われています。また、従来の糖類の代替品として使用されている人工甘味料もネガティブ要素として評価対象に加わりました。
同時に、ニュートリ・スコアは、子どもの肥満予防や成人の肥満を背景とした生活習慣病、および、その重症例としての脳心血管疾患の予防に役立てることを第一目的としており、食の安全を確約しているものではないことも併せて啓発する動きも見られます。
5. まとめ
EU(欧州連合)によるニュートリ・スコア換算のアルゴリズムや修正内容、ラベル表示内容の明瞭性と比較した時、現行の食品表示のあり方は、本来の導入目的に則って消費者へ正確性と安心安全を提供する情報源としての透明性は担保できていると言えるのでしょうか。
消費者に公正な食品選択の機会を提供し、健康維持・疾病予防に役立つように幾度となく議論を重ね、栄養成分表示内容を誰にでも分かりやすい表現で表示することに努めているニュートリ・スコア。
同様に、改良を試みながら、法改正を重ね、栄養成分表示や保健用食品制度を設け、活用を促している日本の食品表示。
欧州連合加盟国と比較して、過体重および肥満症に該当する国民の割合は低値で留まっている一方で、子どもの肥満は欧州同様に増加傾向にあります。
また、添加物の表示方法および規制対象は、欧州と比較し、厳格とは言い難い状況下にあります。
更には、一昨年発生した機能性表示食品によってもたらされた健康被害、「遺伝子組み換え食品でない」「ゲノム編集」表現の撤廃、原材料が「国産」であろと「外国産」であろうと同一の表現が用いられる「国内製造」など、商品を手にした際に私たち消費者が混乱しそうな表示も溢れています。
かつては豊蘆原の瑞穂の国と呼ばれ、海と森林に囲まれた肥沃な大地で育まれた四季折々の良質な食材をベースに調理される和食。
誇るべき伝統文化を擁する日本に於いて、現在、超加工食品の横行と不明瞭な食品表示によって、正しい情報の収集に多くの時間を費やしなくてはならない「情報の選択および食選びが困難な時代」に私たちは生きていると言えるのかもしれません。
【参考URL】
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
「健康食品」の安全性・有効性情報
https://hfnet.nibiohn.go.jp/
消費者庁
https://www.caa.go.jp/
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/index.html
Update report from the Scientific Committee of the Nutri-Score 2022
「Update of the Nutri-Score algorithm」