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世界幸福度ランキング上位にも君臨するオーガニック先進国デンマーク

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世界幸福度ランキング上位にも君臨するオーガニック先進国デンマーク

北欧の国デンマーク。皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。

国際連合が発表する「世界幸福度ランキング」では常に上位に君臨する幸せな国。

人にも動物にも環境にも優しい国デンマークが推進するオーガニック農畜産業を中心に、世界のオーガニック市場の動向について見ていきましょう。

世界幸福度ランキング」の概要も併せてご紹介します。

さて、日本は何位にランクインしているのでしょうか?

目次


1. デンマーク王国の基礎知識
1.1 プロファイル
1.2 歴史・外交
1.3 主要産業
2. オーガニック(有機農畜産物)とは?
2.1 定義
2.2 有機JAS制度
2.3 世界のオーガニック動向
3. オーガニック大国デンマーク
3.1 オーガニック推進の歴史
3.2 厳格なオーガニックの条件
3.2.1 農業者
3.2.2 耕作・飼育・加工品
3.2.2.1 耕作要件概要
3.2.2.2 飼育要件概要
3.2.2.3 加工品要件概要
3.3 オーガニックが支持される理由
4. 世界幸福度ランキング上位国
4.1 世界幸福度ランキングとは?
4.2 ハピネス国家トップ10
4.3 サイクリストにも優しい国
5. まとめ

 
 
1. デンマーク王国の基礎知識

1.1 プロファイル
ドイツ北部よりスウェーデンに向かって突き出た半島の地形を有し、国土面積は九州地方と同等の約4.3万㎡、人口約598万人が住まう北欧の国デンマーク。童話作家アンデルセンを生み出した国としても有名です。

スウェーデンに隣接する首都コペンハーゲンには約66万人が暮らし、ノルウェー語、スウェーデン語と共に北ゲルマン語群の一角を成すデンマーク語を使用。

欧州最古の王室であるデンマーク王国。昨年2024年1月14日には、御年56歳のフレデリック10世が新国王として即位しました。

立憲君主制の政治体制のもと、議会は任期4年の一院制が敷かれています。2022年12月に首相として就任した中道左派で社民党のメッテ・フレデリクセン氏が国政を牽引。
 
1.2 歴史・外交
1973年に他の北欧諸国に先駆け欧州共同体 (EC) へ加盟した一方で、EU創設を定めた欧州連合条約、通称マーストリヒト条約の批准に際し、1992年に行われた国民投票では「主権喪失」「福祉水準の低下」「EUの官僚主導」への懸念から否認。EU加盟国との折衝を重ね、翌1993年の国民再投票で可決、批准に至りました。

一方で、2000年9月に実施された国民投票では、EU加盟国共通通貨ユーロへの参加が否決され、現在も自国通貨デンマーク・クローネが用いられています。定期的に行われている国民投票では、近年、ユーロ圏への参加を希望する声が半数を超えており、導入に向けた動きが加速しています。
 
1.3 主要産業
主要産業として、運輸業(海運等)、サービス業(行政・教育・ヘルスケア等)、製造業(医薬品・機械等)、エネルギー、農業(畜産等)が挙げられています。

インスリン製剤を始めとした糖尿病治療薬で世界をリードするヘルスケア企業ノボノルディスクファーマ社は、1923年にデンマークで創設されました。

また、世界最大のオーガニック乳製品企業アーラ社、ヨーロッパ最大のオーガニック畜産企業フリランド社もデンマークを本拠地としています。
 

2. オーガニック(有機農畜産物)とは?
 
2.1 定義
国際食品規格を策定し、消費者の健康保護および食品の公正な貿易の確保を目的として、1963年にFAO及びWHOにより設置された国際的な政府間機関であるCODEX(コーデックス)委員会によって1999年に「有機的に生産される食品の生産、加工、表示 及び販売に係るガイドライン」上で示された有機農業の定義は以下の通りです。

生物の多様性、生物的循環及び土壌の生物活性等、農業生態系の健全性を促進し強化する全体的な生産管理システム

2006 (平成18)年に施行された「有機農業の推進に関する法律」による有機農業の定義は以下の通りです。

化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業

有機農産物を生産する際、国内に於ける具体的な指標は以下の通りです。

1. 周辺から使用禁止資材が飛来し又は流入しないように必要な措置を講じている

2. 播種又は植付け前2年以上化学肥料や化学合成農薬を使用しない

3. 組換えDNA技術の利用や放射線照射を行わない
 
2.2 有機JAS制度
コーデックス(食品の国際規格を定める機関)のガイドラインに準拠し、農畜産業に由来する環境への負荷を低減した持続可能な生産方式の基準に則って生産された農畜産物を第三者機関が検査し、認証された事業者に対し「有機JASマーク」の使用を認める制度です。

他国の制度を自国の制度と同等と認め、相手国の有機認証品を自国の有機認証品として取り扱う相互認証(取決めに応じ一部除外品あり)は、2024年1月現在、日本と米国・EU・カナダ・台湾・英国・スイスの5か国1連合加盟国の間で行われています。
 
2.3 世界のオーガニック動向
世界の有機農地面積は9,640ヘクタールであり、そのうちの約半分を占める有機耕作地割合は、オーストラリアの国土で展開されています。

各国内に於いて、有機農地面積割合が10%を超える国は121か国で農業全体の2%に過ぎず、化学肥料や化学合成農薬を使用した慣行栽培農業が世界の大多数である一方、2021年以降、有機農地面積の顕著な増加が世界的に加速しています。

オーガニック先進国であるデンマークの有機農地面積割合は2024年現在で21%

EU加盟国で有機農地面積割合のトップを走る国はオーストリアで24%(2017年時点)、その占有率は、世界でも第3位にランクインしています。

日本の有機農地面積は0.3%であり、隣国の台湾では1.3%、韓国では2.5%とアジア諸国の中に於いても、有機農業の取組に対する日本の遅れは明らかです。

EU域内の有機農業の市場規模は、2017年時点で342億8500万ユーロ(約4兆1000億円)。

ドイツでは、2018年現在で消費者の78%が有機産品を購入。欧州の有機食品消費の約3割を占め、需要が供給を上回り、有機産品の輸入も加速しています。また、消費者の1/3以上は、将来的にも有機産品の消費を拡大する意向を示しています。
 

3. オーガニック大国デンマーク

3.1 オーガニック推進の歴史
デンマークは、1987年、世界に先立ってオーガニック生産に関する規則を初めて導入した国であり、同年、デンマークオーガニック食品諮問機関理事会も創設。

当該規則は、当時すでに施行されていた農業・食品法に基づいて策定され、農業者に対し、オーガニック農業に転じる際に、助成金制度も導入。

1989年には、厳格な基準を設けたオーガニックラベルを国内向けに導入を開始しました。

オーガニックに関わる法整備が進められた背景として、1882年以来農業者による協同組合運動がオーガニック農業発展に大きく寄与していると言われています。その始まりは、酪農組合から発出されました。

2010年には、EU共通のオーガニックラベルを導入

1995年、デンマークオーガニック食品諮問機関理事会は、最初の国家オーガニック行動計画を策定

効果的かつ革新的なオーガニック政策が、サスティナブルな食品および農業システムへの移行に寄与したことが評され、2018年には国際連合の未来政策賞を受賞しています。
 
3.2 厳格なオーガニックの条件

3.2.1 農業者
大半のオーガニック農業者は3年から5年の農業専門訓練を経て就農し、オーガニック生産に関するEU(欧州連合)規則を上回る厳格な条件が課された中で農畜産業を営んでいます。

農業者は、農畜産物生産に関わるサスティナブル指標であるRISEモデルに照らし合わせて、生物多様性・エネルギーと気候・水資源の活用・栄養フロー・アニマルウェルフェア・土壌肥沃・経営・経済・生活の質および労働条件の10領域にわたって、年に複数回の評価および監査を受けます。
 
3.2.2 耕作・飼育・加工品
3.2.2.1 耕作要件概要
耕作地の前提条件として、EU(欧州連合)の要求に従って、植物検疫のための化学製品および合成肥料が使用されていないことを証明するために、2年間の転換期間を経る必要があります。

また、除草目的として、オーガニック農地で植物検疫の化学製品を使用することは禁じられており、ロボベータ(Robovator)というGPS管理されたトラクターで除去。
 
3.2.2.2 飼育要件概要
アニマルウェルフェア(動物福祉)の原則に則り、動物本来の生態に即した行動に即し、かつ、健康的で衛生的な飼育環境下に於いて、動物に過度のストレスを与えない生産方法を用いる必要があります。

家畜の種別によって、飼料・飼育環境・医療的措置・検閲・出荷の方法や期間が細かく規定されています。

3.2.2.3 加工品要件概要
EU全体で承認されている390余りの添加物の約13.5%に相当する53品目のみ認可されており、人工着色料、人工香料および甘味料、遺伝子組換えの原材料や放射線照射による原材料も認められていません。さらに、亜硝酸塩の使用も禁止されています。
 
3.3 オーガニックが支持される理由
デンマークで有機農畜産品が支持されている背景として、以下3点が主な理由として挙げられます。

1. 王室および政府主導の啓発と無償で施行される認証制度と品質への信頼感

2. 化学物質に対する健康および環境課題意識

3. 動物愛護の精神
 

4. 世界幸福度ランキング上位国

4.1 世界幸福度ランキングとは?
3月20日は国連によって定められた「国際幸福の日」。

毎年この記念日には、各国の生涯満足度をスコア化しランキングとして発表。

世界幸福報告書」としてまとめられた最新版「The World Happiness Report 2025」が先日公開されました。

生涯満足度の評価項目として掲げられている指標は以下の6つ。

1. GDP
2. 健康寿命
3. 社会的支援
4. 選択の自由度
5. 寛容度
6. 腐敗認識指数(汚職度)
 
4.2 ハピネス国家トップ10
147か国による幸福度ランキングトップ10は以下の通りです。

1. フィンランド 
2. デンマーク
3. アイスランド
4. スウェーデン
5. オランダ
6. コスタリカ
7. ノルウェー
8. イスラエル
9. ルクセンブルク
10. メキシコ

トップ10の多くは北欧諸国。2025年版の報告書では、デンマークは第2位にランクインし、8年連続トップを走り続けるフィンランド、アイスランドと共に、長らく、ベスト3の座を競っています。

ご参考までに、オーストラリア11位、カナダ18位、ドイツ22位、米国24位、フランス30位。

気になる日本は…55位です。

隣国の韓国は58位、中国68位。アジア最上位国は台湾で27位と言うランキング結果。
 
4.3 サイクリストにも優しい国
環境と健康に配慮した姿勢はオーガニック農畜産物に限ったことではありません。

サイクリング環境を採点・評価したランキング「The Copenhagenize Index(ザ・コペンハーゲナイズ・インデックス)2019年度版」でも堂々の第1位にランクインしていた首都コペンハーゲン

デンマークに自転車が紹介されたのは、1880年代。その後、1920年から1930年代にかけて、サイクリング文化は「平等と自由」のシンボルとして発展しました。

1950年代には、自動車産業が隆盛し、高速道路が整備されるなど、サイクリング文化は衰退し、自動車に取って代わられたかのように思われましたが、1970年代のオイルショックを機に、歩行者天国ならぬサイクリスト天国「カーフリーサンデー : Car Free Sunday」がメインストリートに設置され復活の兆しを見せ始めます。

その後、大気汚染や気候変動を地球環境のネガティブな変化を背景に、ガソリンや自動車への重税化が図られ、現在、サイクリング文化は再興し、更なる大きな発展を遂げています。

サイクリングは、次の通り、健康と環境にポジティブな影響を与えるとして国策としても推進しています。

・体調不良によるプレゼンティーズムおよびアブセンティーズムを100万件以上低減

・年間20,000トンの二酸化炭素排出を削減

・移行手段を自動車から自転車へ転換することで1キロあたり1ユーロの医療費削減効果

・学童の通学手段を自動車送迎から自転車へ転換することで1日あたり4時間以上の集中力向上

走行に際する安全策を講じる必要性はありますが、渋滞によるストレスの増加と大気汚染、重大な交通事故の発生、ビジネスパーソンのメンタル不調や子どもたちの肥満が増加している現代に於いて、理にかなった課題解決策となり得るのではないでしょうか。
 

5. まとめ

ジェンダー平等も確立し、人にも動物にも環境にも優しい国デンマーク。

SDGsを机上の空論で終わらせることなく、個人・地域・組織すべてのレベルに於いて日々実践し、環境保全を第一義として捉え行動する視点と共助の在り方が幸福指数にも反映されているように思われます。

「歴史」の項でも垣間見られたように、主体的に思考し発言し行動する国民ひとりひとりの在り方が、全ての施策にも反映されています。

同様に、自助・共助・公助のバランスが非常に良いこともデンマークという国家および国民性の特徴の1つではないでしょうか。

また、オーガニック先進国たる所以とも言える生産過程を見たとき、みなさんはどのように感じられましたか?

安心感と信頼感が増し、実際に手に取ってみたいと考えたのは私だけでしょうか。

私たちの身体を形成する食物は、どのように育まれ、出荷されているのかを知ることも健康と幸せのベースとして大切な情報です。

 
参考URL・書類・資料】
外務省
https://www.mofa.go.jp/

農林水産省
https://www.maff.go.jp/

Ministry of Foreign Affairs of Denmark
https://denmark.dk/

United Nations
https://www.un.org/en/observances/happiness-day

World Happiness Report
https://worldhappiness.report/

「有機農業で変わる食と暮らし ヨーロッパの現場から」 
 香坂玲、石井圭一 著

「デンマーク王国大使館配布資料」

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グローバルでクリエイティブな環境、伝統文化、洗練された都市景観とカントリーサイド、読書とアート、世界の建築と庭園、お料理と和の食材を中心にグローカルな食材をこよなく愛する運営者wanobi(医療・保健の国家資格保有)が、女性・こども・家族のココロとカラダにとって大切な情報をお伝えします。日・仏・英3か国語で対応可能

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