昨今、糖尿病薬の一種であるGLP-1受容体作動薬に関する顕著な体重減少効果が示されたことにより、体重コントロールがなかなか功を奏しない患者さんにとっては吉報である一方で、不正に製造・処方・販売されるケースが国内外で散見される忌々しき事態も発生。
予期せぬ重大な健康被害を未然に防ぐ目的から、医療・保健の世界的権威機関であるWHO(世界保健機構)を筆頭とし、関連組織や国内外の医学系学会などから注意喚起が発出されています。
実際に、GLP-1受容体作動薬はどのような作用を有し、または、使用にあたっては、どのような注意が必要かなど、具体的に見ていきましょう。
目次
1. 糖尿病治療薬の種類
1.1 糖尿病とは?
1.2 日本人は糖尿病になりやすい!?
1.3 糖尿病治療薬の種類
2. インクレチン関連薬
2.1 インクレチンとは?
2.2 インクレチン関連薬と特徴
3. GLP-1受容体作動薬
3.1 適用
3.2 副作用
4. GLP-1受容体作動薬と社会問題
5. まとめ
1. 糖尿病治療薬の種類
1.1 糖尿病とは?
体を動かす原動力としてエネルギーを供給するブドウ糖。ブドウ糖は、主に、主食に含まれる炭水化物中の糖質が消化されて出来たもの。
本来、ブドウ糖はエネルギー源として使用されるため、体にとっては必要不可欠ですが、血液中のブドウ糖の量が必要量を超過し、過多になった状態を高血糖と言い、この状態が長く持続することで、全身の血管が徐々に障害されていきます。
通常は、高血糖の状態になると、血糖が筋肉や肝臓に上手く取り込まれるように膵臓のβ細胞からインスリンと呼ばれるホルモンが分泌され、血糖値が正常範囲で維持されます。
一方で、インスリンが本来の働きを発揮出来なくなったり、インスリンそのものの分泌が低下している場合、血液中のブドウ糖の量が常に過剰となる高血糖の状態が持続し、2型糖尿病を発症します。
2型糖尿病に対して、1型糖尿病では、膵臓のβ細胞が破壊され、インスリン分泌に障害を来しており、インスリンが分泌されていない状態。
1.2 日本人は糖尿病になりやすい!?
日本人は元来、インスリンの分泌量が欧米人と比較して少ないと言われています。
長らく、穀物や野菜中心の菜食主義に近い食生活を営んでいたため、少ないインスリン量でも賄えていた体への血糖の取り込みも、急速な肉食文化の広がりでインスリン必要量も増し、もともとインスリン量が少ない日本人の体にとっては負担が増している状態。
高カロリーな食習慣へのシフトに加え、運動不足も重なり、現在、40歳以上の男性の3人に1人、女性の4人に1人が糖尿病、あるいは、糖尿病予備群であると言われています。
1.3 糖尿病治療薬の種類
糖尿病治療薬は、インスリンの働きが低下するインスリン抵抗性の改善、分泌不全に陥っているインスリン分泌を促進、不足しているインスリンの補充、過剰となっている糖の吸収や排出を調整することを目的として、経口薬や注射薬が用いられます。
どの薬剤を用いるかは、患者さんの病態や重症度、治療歴などを鑑み、担当医が判断します。患者さんの既往歴や現病歴、年齢などによっては、禁忌や注意が厳重な注意が必要なため、糖尿病専門医に照会の上、処方を判断するケースも。
2. インクレチン関連薬
2.1 インクレチンとは?
インクレチンは、食事摂取に伴って、腸管内分泌細胞から分泌され、インスリンの分泌促進をサポートする消化管ホルモンの総称。
代表的なインクレチンとして、GIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)とGLP-1(glucagon-like peptide-1)があります。
2.2 インクレチン関連薬と特徴
インクレチン関連薬とは、高血糖時にインスリンの分泌を促し、血糖を下げる働きを担う薬剤の総称。
分泌されたGIPとGLP-1を即座に不活化してしまうDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)と呼ばれる蛋白分解酵素を阻害するDPP-4阻害薬とGLP-1およびGIP/GLP-1を活性化させるGLP-1受容体作動薬、GIP/GLP受容体作動薬の3種の薬剤が現在臨床に応用されています。
3. GLP-1受容体作動薬
3.1 適用
GLP-1受容体作動薬には、注射薬と経口薬があり、インスリンの分泌を促進し、血糖値を低下させると共に、中枢神経では、視床下部に働きかけ、食欲を低下させることで、体重減少効果をもたらします。
また、腎臓病や心臓病など、糖尿病に関連する疾患への効果も報告されています。
3.2 副作用
インクレチン関連薬の1つであるGLP-1受容体作動薬は、インスリン製剤やSU剤と呼ばれる他の製剤と比較し、本来、単独では低血糖症状を引き起こし難い一方で、他剤との併用や高齢者、腎機能が低下している方、BMI25未満の非過体重の方では、重大な低血糖症状や過度の体重減少、嘔気や嘔吐などの消化器症状をきたし易いとも言われています。
4. GLP-1受容体作動薬と社会問題
国内外では、GLP-1受容体作動薬の体重減少効果がクローズアップされたことにより、糖尿病の治療以外で、「痩せ薬」として不正に処方されるケース、正規の製造・販売ルート以外で市場に出回る事態が発生。
現在、世界的に問題視されているのは、注射薬である持続性GLP-1受容体作動薬であるセマグルチド(オゼンピック皮下注)の不正製造の増加。
医師による適切な説明を受けず、オンラインなどで安易にこれらを購入し用いることで、配合内容や容量の不適合による効果減弱・増大、病態との不一致や使用対象外であることを背景とし、予期せぬ副作用が出現し、健康被害が拡大する可能性が示唆され、危惧されています。
5. まとめ
肥満は病気の温床とも言われ、何度もダイエットを試みても続かない。せっかく減量できたのにすぐにリバウンドして意気消沈。
めげずにウェイトコントロールを試みても、越えても、越えても、次々に迫りくる様々なハードル。
そんな時に、差し込む天からの光明!と思い飛びついた先に待ち構えていたのは悪魔からの贈り物…。という事態に陥らないためにも、健康情報は正しくキャッチしたいものです。
苦行を伴わず、心地よく、無理なく続けられるウェイトコントロールの方法をwell-being WANOBIは提案します!
【参考文献/URL】
WHO World Health Organization
https://www.who.int/
一般社団法人 日本糖尿病学会
https://www.jds.or.jp/
「糖尿病学」
門脇孝 他 編集
西村書店