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茶カテキンとフッ化物のハーモニーが功を奏するデンタルヘルス

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茶カテキンとフッ化物のハーモニーが功を奏するデンタルヘルス

歯の喪失に繋がる2大要因の1つである齲蝕、いわゆる虫歯。

食後の歯磨きだけではなく、長い歴史の中で育まれた伝統的な食文化の中にも、齲蝕を阻止する強力な術があります。

更に、科学的根拠に基づいた予防法と伝統文化を組み合わせることで、最強の齲蝕予防効果も期待できます。

一体、どのような手法なのでしょうか?

目次


1. 虫歯の原因?糖と齲蝕の甘い依存関係
1.1 齲蝕の発生要因と機序
1.2 口腔内細菌が好む糖の種類
2. 茶カテキンは優秀なバランサー
2.1 茶とカテキン
2.2 茶カテキン含有量が最多のお茶は何茶?
2.3 茶カテキンの齲蝕予防効果
3. フッ化物のプロテクト効果
3.1 フッ素のプロファイル
3.2 フッ化物は安全?
3.3 フッ化物による齲蝕予防効果
4. 茶カテキンとフッ化物が奏でる好循環
5. まとめ

 

1. 虫歯の原因?糖と齲蝕の甘い依存関係

1.1 齲蝕の発生要因と機序
食後の歯磨きは虫歯を予防する良い習慣ですが、歯磨きを心掛けていても虫歯になりやすい人もいます。

そもそも、齲蝕(うしょく)、いわゆる虫歯はどのようにして発生するのでしょうか?

齲蝕が発生する条件は、口腔内の細菌(いわゆる虫歯菌)、細菌の餌となる糖、細菌が棲みやすい生体環境(唾液分泌など)の3大要因に集約され、口腔内細菌にとって繁殖するのに都合の良い好条件が整った時に虫歯として発症します。

齲蝕を助長する最強の細菌で通称虫歯菌とも呼ばれるミュータンス菌は、歯の表面に歯垢(バイオフィルム)として介在し、好物の糖を媒体として乳酸や酢酸などの酸を産生します。

酸が産生されることにより口腔内のpHは低下し、歯の結晶が溶けやすくなる土壌が完成。

この環境条件が長時間持続することで、歯の溶解修復作業に遅れが生じ、歯質が欠損してしまう結果に。これが、いわゆる虫歯の状態です。
 
1.2 口腔内細菌が好む糖の種類
口腔内細菌にとって好ましい糖の形態とは、糖質の最小ユニットであり、取り込みが容易であるグルクトースやフルクトースなどの単糖類と、単糖同士が少数結合したスクロースやラクトースなどの少糖類。

その中でも、口腔内細菌が最も好む糖はスクロース、いわゆる砂糖です。

一方で、デンプンなどの多糖類は分解が容易では無いため、ほとんど利用されません。

しかし、唾液に含まれるαアミラーゼが存在することで分解は促進され、デンプンからの酸産生量も増加します。
 

2. 茶カテキンは優秀なバランサー
お茶に含まれるカテキンは、腸管感染症(食中毒)やインフルエンザなどのウィルス感染症、更には、薬剤耐性菌など様々な疾患や症候群の温床となる環境を減弱化する働きを示すことが明らかになっています。

ここでは、齲蝕発生要因となる口腔内細菌に対する茶カテキンの効果について見ていきましょう。
 
2.1 茶とカテキン
ポリフェノールであるカテキンは、茶葉中に多く含まれています。

同じ茶葉を原料として用いられている茶類。しかし、その発酵過程により味も色も変化し、緑茶、ウーロン茶、紅茶と各々特徴豊かな茶へ多様に変容します。

カテキンの量は発酵過程を経ることにより減少。よって、緑茶、抹茶、ほうじ茶、番茶など、日本では馴染み深い非発酵のお茶にカテキンはより多く含まれています。
 
2.2 茶カテキン含有量が最多のお茶は何茶?
カテキンの成分の中でも、最も抗菌力が高いと言われるエピガロカテキンガレートを多く含むお茶は、緑茶です。故に、緑茶は、数あるお茶の中でも、齲蝕予防効果が最も期待できる茶。
 
2.3 茶カテキンの齲蝕予防効果
通常飲用する緑茶に含まれるカテキン濃度は1mg/ml未満であり、殺菌効果があるとまでは言い難いというエビデンスがある一方で、齲蝕の温床となる口腔内細菌による酸産は抑制できることは明らかとなっており、日常的に飲用する緑茶の量でも十分に予防可能であることが示唆されています。

フランス料理とワインの関係のように、和食と緑茶の食中コラボレーションも齲蝕予防には良いのかもしれません。和食と日本酒のペアリングを楽しみたい場合は、食中の後半、または、食後に緑茶を頂く妙案も。

眠気覚ましや集中力を高めるカフェインの効果を期待してコーヒーを召し上がっている方は、緑茶も取り入れてみることで知らず知らずのうちに齲蝕予防効果も得られ一石二鳥。
 

3. フッ化物のプロテクト効果
虫歯予防効果と相俟って、有害物質として体内に残留するという情報も錯綜し、フッ化物塗布、フッ化物洗口、または、歯磨き粉に含まれるフッ化物に対し、利用を懸念する傾向はないでしょうか?

歯科用フッ化物とその他のフッ素化合物の違いと安全性について見ていきましょう。
 
3.1 フッ素のプロファイル
元素番号9番、第17族に分類されるフッ素。電気陰性度が高く、電子を引き付ける力が強い元素です。同族元素である元素番号17番の塩素と共にハロゲン系元素として高い酸化力を有し、その特性から、殺菌・漂白剤として活用されています。
 
3.2 フッ化物は安全?
フッ化物は、フッ素と他の元素から構成される化合物。歯科用として用いられるフッ化物は、ナトリウムとフッ素の化合物で齲蝕予防効果と安全性は確立されています。

生体に有益な効果をもたらすフッ化物およびフッ素化合物は、歯科用以外にも、抗高脂血症薬、抗がん剤など医薬品としても用いられています。

昨今、体内への蓄積性と難分解性の性質を有することから健康被害の発生との関連性が指摘され、水道水や食品への混入が懸念されている渦中の物質、有機フッ素化合物のPFAS(ピーファス)とは元素構成も特性も異なりますので、ご心配なく。
 
3.3 フッ化物による齲蝕予防効果
フッ化物は歯の結晶化を強化する働きを担っており、歯の溶解から欠損へ進行する過程を阻止することで齲蝕を予防しています。

飲料水にフッ化物イオン濃度が約1ppmの時に齲蝕予防効果が高まるとのエビデンスがあり、米国などでは水道水にフッ化物を添加する水道フロリデーションを長らく実施され、齲蝕予防効果も証明されています。

一方、日本に於いては、生態系に排出されるフッ化物が多すぎる場合、環境汚染の原因になるとして、排出上限値を設けており、現行では、水道フロリデーションは行われていません。

2023年に東京医科歯科大学の研究班から、水道水の天然フッ化物濃度0.1ppm上昇と比例し、濃度が高い水道水を飲用したこどもの齲蝕発生率は3%少ないという研究成果が発表されたところであり、こどものデンタルヘルスや糖尿病発症予防の一環として、清涼飲料水の飲用を減らす取り組みや、国内における水道フロリデーションへの展開が繰り広げられていく可能性が示唆されます。
 

4. 茶カテキンとフッ化物が奏でる好循環
酸性化を阻止する働きを担う茶カテキンと歯の結晶化を強化するフッ化物が共存することで相乗効果が得られ、齲蝕予防効果も高まると言われています。

現行では、国内に於ける水道フロリデーションは実施されておりませんが、緑茶を中心に、日常生活の中で齲蝕予防効果が期待できる習慣を私たち日本人は有しています。

せっかくの良き伝統を私たち一人一人が絶やさず守っていきたいものです。
 

5. まとめ
医食同源という言葉が表す通り、日本を始めたとしたアジア諸国では、未病対策なる予防習慣が日常の食生活の中に根付いています。

先人たちが日々の生活の中から見出し、科学的にも効果が実証されている誇るべき良い習慣は、健康、そして、文化双方の視点から大切に守り育み、後世へも伝えていきたいですね。
 
【参考文献】
「ポリフェノールの機能と多角的応用」
監修 田中隆
[緑茶カテキンのう蝕予防効果]
鷲尾順平、安彦友希、髙橋信博 著
東北大学大学院歯学研究科 口腔生化学分野
株式会社シーエムシー出版
 
「フッ化物応用の科学 第2版」
一般社団法人 日本口腔衛生学会 フッ化物応用委員会 編
一般財団法人 口腔保健協会
 

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医療・保健の国家資格を有し、医学系学会で学びを深め、グローバルでクリエイティブな環境、読書とアート、世界の建築と庭園、お料理とグローカル食材をこよなく愛する運営者wanobiが、これまでに培った知識と経験、学びのアップデートを基に、女性・こども・家族のココロとカラダにとって大切な情報をお伝えします。日・仏・英3か国語で運営

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