うごく・運動 かおる・芳香 たべる・栄養 ねむる・睡眠 はかる・測定/健診 - check-up - 女性の健康 -women's health-

【家族・こども・私】気候変動が健康に与える影響と未来予想図

  1. HOME >
  2. うごく・運動 >

【家族・こども・私】気候変動が健康に与える影響と未来予想図

18世紀に黎明期を迎えた産業革命以降、世界では平均1.1℃の気温上昇が確認されており、戦略的に温室効果ガスを削減しない限り、今世紀末には2.5℃から2.9℃気温が上昇すると最悪のシナリオが想定されています。

生命誕生以降の史上、かつてないほど急進的に上昇している気温は、先進国と呼ばれる国々が多くを占める北半球で20世紀以降顕著に観測され、1920年から1940年代の第1期、1975年以降の第2期に鋭角な上昇カーブを描き、1980年から2005年の約20年間で最高観測値を記録。

2016年にはその記録も更新されました。近い将来、2023年から2027年の間に更なる記録が更新されることが予測されています。

近年、世界各地で記録的な猛暑が観測され、洪水、山野火災や旱魃が散発したことも記憶に新しい出来事です。

地球環境そのもの、また、そこに住まう私たち人間に齎される“最悪のシナリオ”、悲劇的な未来予想図とは一体どのようなものなのでしょうか?

私たちにとって、最も身近な出来事である“健康問題”を切り口に、産業革命以降の気候変動の象徴であり、近年多発している熱波と疾病の発症との因果関係について、著名な医学ジャーナルから“気になる記事”をピックアップし、昨今の気候と健康に関する医学研究の潮流と併せてご紹介します。

目次


1. 経済大国アメリカ合衆国と気候変動
2. 猛暑が健康に与える影響
3. 医療機関が逼迫するリスク
4. 猛暑による健康リスクが甚大な人々とは?
5. まとめ

 

1. 経済大国アメリカ合衆国と気候変動
近年、気候変動が大きく変化していることは、熱波の発生頻度や持続期間に明らかに反映されていると言われています。

熱波の年間発生件数は1980年代と比較して2倍。年間熱波持続期間は、1960年代と比較して3倍も延長しているという現実。

これに伴い、米国を含む43か国で1991年から2018年に発生した熱中症関連死の少なくとも1/3に該当する症例は、温室効果ガス排出量との因果関係が示唆されています。

世界的に見ても、65歳以上のご高齢者の熱中症関連死亡症例自体が、2000年から2004年当時と比較し、直近の2018年から2022年の4年間では、85%も上昇している事実が医学的権威の最高峰ジャーナルを母体とする研究団による調査結果で明らかにされました。
 

2. 猛暑が健康に与える影響
気温の上昇に伴い、身体の深部体温も上昇。深部体温が40℃を超えた場合、多臓器不全、最悪の場合、死に至る事態を招く可能性が高まります。

気温上昇との関連性が示唆される主な疾患は、心臓病や脳卒中などの循環器疾患、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患、腎臓病です。これらの疾患は、気温と共に大気汚染との関連性も示唆。

また、妊娠・周産期に於いても、未熟児や低出生体重児との関連性や、先天性心疾患などの悪影響を及ぼすと考えられています。

更には、猛暑発生件数の増加に伴い、不安症、うつ病、希死念慮などの心因性症状および疾患の発症、暴力などの攻撃的行為が増加するとまで付言され、健康リスクの拡大が懸念されています。

身体機能の低下を伴うフレイル状態にあるご高齢の方々に於いては、猛暑の環境下に曝されていなくとも、健康状態は容易に悪化するという悲劇のシナリオさえ想定内の範疇であるという悲しい現実。
 

3. 医療機関が逼迫するリスク
酷暑の発生件数の増加に伴い、仮に、熱中症発症予防に努めていても、発症件数の増加は免れず、救急搬送件数および救急医療が逼迫することは明らかであるとの悲観的な見解もみられます。

現に、米国で実施された大規模調査によると、温暖な初夏から始まる夏季に於いては、その他のシーズンと比較して、救急救命室の稼働率は7.8%上昇するとの結果が明らかにされました。特に発症件数の上昇が顕著であった原因疾患は、熱中症、腎臓病、メンタル不調です。

入院に至った症例の多くは、電解質異常、心臓病、呼吸器疾患、糖尿病、腎不全であり、何れも最高気温の上昇が著しかった地域で入院発生件数および致死率も増加したという、気候変動と疾患の明らかな因果関係が示されました。

他疾患により通院・入院を必要とする患者さんへの医療提供体制が逼迫し、他シーズンと比較し、機能が低下するリスクが懸念されます。
 

4. 猛暑による健康リスクが甚大な人々とは?
疾患や加齢により身体機能が低下しているご高齢の方々、身体機能が発達段階の途中にある子どもたち、高血圧や糖尿病、腎疾患、メンタル不調など慢性疾患を抱えている方々、工業・高層化が進み緑地が減少した地域に住まう住人が最も健康リスクを被りやすい人々。

全ての人が平等に健康リスクを回避するための恩恵を受けるには、菜園も含む緑地化の拡大、ヘルスチェックの実施、遮熱効果建造物の検討、熱中症アラートの活用と予防、遮熱シェルター設置の推進が有効であると紹介しています。
 

5. まとめ
スマートウォッチを装着し、ジム通いやジョギングなどで日々ウェルネス行動に励んでいても、私たちの健康は、地球環境にも大きく左右される現実。

熱帯夜の寝苦しさによる睡眠の質が低下し「寝ても疲れが取れない…」現象、蒸し暑さによる不快指数の上昇に伴い「イライラする」逸話は、「夏季にあるあるの話」で語られる次元では無くなってくる日も間近に迫っているのかもしれません。

悲劇のシナリオを回避し、私たち、そして、家族、次世代の未来予想図をポジティブな方向に書き換えるには、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)など環境分野の専門家たちによる戦略的な施策や、環境に対する問題意識を私たち一人一人が日常生活の中で育み、予防行動を実践する双方向の協働が必要です。

みんなにとってポジティブな結果が齎されることを願いつつ日々行動したいですね。

※文中に明記した数値等は下記文献およびサイトを参照の上掲載しております。
 
【参考文献/URL】
Climate Change, Extreme Heat, and Health
Michelle L. Bell, Ph.D., Antonio Gasparrini, Ph.D.,and Georges C. Benjamin, M.D
The New England Journal of Medicine
2024; 390:1793-801

L’homme et le climat
Une liaison dangereuse

Edouard BARD
Gallimard 2005

The Lancet Countdown
https://www.lancetcountdown.org/
 

【家族・こども・私】睡眠の質や聴力にも影響を与える騒音レベル

水道水・食品は安全?化学物質PFASが健康に与える影響

茶カテキンとフッ化物のハーモニーが功を奏するデンタルヘルス

家族計画や感性にも影響を及ぼす?微量ながら重要な役割を担う亜鉛

女性の喫煙率1割未満の日本で肺がん死亡者数が多い理由

緑豊かな薫風の季節!屋外アクティビティで五感を研ぎ澄まし暑熱順化

【こどもと家族の健康】高コレステロールがこどもの未来に与える影響

日本と世界の宝!和食のクオリティに暗雲もたらす気候変動とは?

【メンタルヘルス】フィットンチッドパワーでしなやかに森林セラピー

【No More Tobacco】G7喫煙率ランキングと女性

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

wanobi

医療・保健の国家資格を有し、医学系学会で学びを深め、グローバルでクリエイティブな環境、読書とアート、世界の建築と庭園、お料理とグローカル食材をこよなく愛する運営者wanobiが、これまでに培った知識と経験、学びのアップデートを基に、女性・こども・家族のココロとカラダにとって大切な情報をお伝えします。日・仏・英3か国語で運営

-うごく・運動, かおる・芳香, たべる・栄養, ねむる・睡眠, はかる・測定/健診 - check-up -, 女性の健康 -women's health-

© 2024 l'Essence de la Santé | The BEST Wellness Program | well-being WANOBl