ノーベル賞受賞の世界的権威が発見した「不老長寿の妙薬 」
あなたなら、おいくらでお買い求めになりますか?
実は、こちらの商品、お近くのスーパーマーケットやコンビニエンスストアでも入手可能で、更には、ご家庭でも簡単に作ることができる「プロバイオティクス食品」の1つです。
さて、こちらの商品の正体は?そして、プロバイオティクスとは一体何を示すのでしょうか?
では、早速見ていきましょう。
目次
1. プロバイオティクスとは?
1.1 概要
1.2 発見の歴史
2. 偉大なバランサー!
プロバイオティクスの正体は?
2.1 乳酸菌
2.2 ビフィズス菌
2.3 乳酸菌とビフィズス菌の役割
3. プロバイオティクス食品のエース!
ヨーグルト
3.1 概要
3.2 発見と飲用の歴史
3.2.1 先史時代から中世・近世
3.2.2 近代から現代
4. ヨーグルトと健康科学
4.1 栄養バランス満点の乳成分
4.2 乳糖不耐性にも優しい吸収力
4.3 全世代を幸せにする健康効果
5. まとめ
1. プロバイオティクスとは?
1.1 概要
プロバイオティクス(probiotics)とは、ギリシャ語の「生命の益になるもの」に由来し、腸内細菌叢を改善し、有益な健康効果をもたらす生きた微生物。
プロバイオティクスの代表菌が発見された19世紀後半から、幾度となく定義を修正され、現在は、2001年にFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機構)が提唱した「十分な量を摂取したときに宿主に有益な健康効果をもたらす生きた微生物」が定義として最も広く用いられています。
健康効果を期待するなら、十分な量のプロバイオティクスを摂取することが重要なポイントです。
1.2 発見の歴史
プロバイオティクスの概念を生み出し、その後の研究に大きなイノベーションを巻き起こす原動力の舞台となったのは、19世紀のフランス人細菌学者ルイ・パストゥール ( Louis Pasteur ) が率いるパストゥール研究所。
当研究所の一部門長として1888年に招かれたのが、後に「プロバイオティクスの父」と称されるウクライナ人研究者イリヤ・メチニコフ ( Ilya Mechnikov )。
メチニコフは、1908年に現在の免疫機構研究の基礎となる「免疫食細胞説」によりノーベル生理学・医学賞を受賞した学者としての先見性と商才を持ち合わせた時代を凌駕する先駆者。
2. 偉大なバランサー!プロバイオティクスの正体は?
腸内細菌叢のバランスを改善し、有益な健康効果をもたらす生きた菌の総称であるプロバイオティクス。その代表格は一体何菌でしょうか?
2.1 乳酸菌
乳酸菌は、炭水化物(糖質など)を分解してエネルギーを獲得し、消費した糖質から50%以上の高割合で乳酸を作る細菌の総称。1857年にパストゥールによって発見されました。
乳酸菌は、ヨーグルトを始めとした乳製品の他にも、意外なところでは、ワインやチョコレート、日本の食品でも味噌や醬油など多くの大豆製品に含まれています。
これらの発酵食品が形成される過程において、乳酸菌はどのような効果をもたらすのでしょうか?
以下の4つが挙げられています。
1) 高い抗菌効果で腐敗を阻止
2) 旨味や風味のエンハンサー
3) 乳酸を排出し有害酵母の阻止と優良酵母を育成
4) 腸内細菌叢と免疫機構の活性化
2.2 ビフィズス菌
1899年にパストゥール研究所に所属するフランス人小児科医アンリ・ティシエ ( Henri Tissier )により発見。
生後5~7日目の乳児の全フローラ中95~100%を占有する腸内細菌の一種で、加齢に伴い減少する菌。不適切な食生活やストレスも減少を加速させる原因に。
ビフィズス菌は乳酸菌と同様、酢酸や乳酸を産出し、腸管内で悪玉菌増殖を抑制する働きを担っています。酢酸が生産されることで抗菌効果も発揮。マウスを用いた研究では、大腸菌O157による感染抑制効果が証明されています。
アトピー性皮膚炎を有する小児ではビフィズス菌数が少ないという研究結果も。
2.3 乳酸菌とビフィズスの役割
腸内環境の改善とは、すなわち、腸内を酸性に保つこと。
プロバイオティクスであるビフィズス菌と乳酸菌による腸内発酵の働きにより短鎖脂肪酸の発生を促し、腸内環境を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を阻止。
その結果として、蠕動運動を促し便通を改善。また、発がん性物質の発生も抑制します。
3. プロバイオティクス食品のエース!ヨーグルト
プロバイオティクスの代表菌である乳酸菌とビフィズス菌が入っている食品と言えば、ヨーグルト!「不老長寿」と謳われた世界的伝統食品について見ていきましょう。
3.1 概要
消化吸収に優れた栄養素をバランス良く含む完全栄養食品であるヨーグルト。
CODEX(食品規格委員会)により、「微生物の作用によりpHの低下する発酵を経て得られる乳製品であり、ブルガリカス菌とサーモフィルス菌の2種類の乳酸菌を使用した発酵乳の1つ」として定義・分類されています。
遊牧民の生活の営みの中から誕生したヨーグルトは、保存性に優れているという特性も有しています。
3.2 発見と飲用の歴史
3.2.1 先史時代から中世・近世
紀元前1万年前から6,500年頃に現在のトルコであるアナトリアが発祥の地。
ヨーグルトという名称は、トルコ語のyogurmak「攪拌する」「濃厚にする」から派生したと言われています。
ヨーグルトの原型は、土器で保存していた乳汁に菌が混入し日光照射を受け誕生したという説と、乳汁を産出する動物の腸管で保存し、その内部に付着していた細菌により発酵が進み半固形化したという2説が主流。
紀元前5000年頃には、ネパールでもヨーグルトが作られていた史実が「涅槃経」に記載。
日本では、飛鳥時代から平安時代にかけて、「酪」と呼ばれるヨーグルトが宮廷内で食されていました。
平安時代、日本の医学書である「医心方」には、乳製品を代表する「ヨーグルト」「バター」「チーズ」に該当する「酪」「蘇」「醍醐」の効用として、現在と同様に、滋養強壮・便通改善・美肌が謳われています。
その後、肉食忌避の影響も受け、ヨーグルトは日本史上から長く忘れ去られることに。
3.2.2 近代から現代
ヨーグルトが不老長寿に役立つとして脚光を浴びるきっかけとなったのは20世紀初頭。
上述のメチニコフが1907年に発表した不老長寿論の異名を持つ著書「楽観論者のエッセイ」でヨーグルトとその細菌成分がブルガリア南部に暮らす住民の長寿に貢献していることを論じたことに始まります。
古代の日本では、貴族のみが食していたヨーグルト。民衆が口にできるようになったのは、文明開化後の明治時代中期以降。食卓にも上るようになったのは昭和時代、第二次世界大戦以降です。
「ブルガリア」のネーミングを有する商品の販売開始は1973年。今では定番商品としてコンビニエンスストアでもお見掛けするようになりました。
4. ヨーグルトと健康科学
世界中で愛されるヨーグルト。その理由と毎日の生活に取り入れるべきカラダへの健康効果について見ていきましょう。
4.1 栄養バランス満点の乳成分
5大栄養素であるタンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルをバランス良く含む乳汁から作られているヨーグルトは、アミノ酸スコア100点満点の完全栄養食品であり、消化吸収にも優れているため、経口・経管栄養剤の主原料の1つとしても用いられています。
タンパク質の構成成分として、半固形(カード)成分のカゼインが約8割、乳清とも呼ばれるヨーグルトをスプーンですくった時に現れる液状成分のホエイが約2割を占有。ホエイには必須アミノ酸の1つであるロイシンが多く含まれており、筋肉合成の基礎を構築する働きを担います。「不要」と捨てずに丸ごと食したい成分。
4.2 乳糖不耐性にも優しい吸収力
牛乳を飲むと下痢症状が誘発される乳糖不耐症。
炭水化物中99%が乳糖である牛乳からヨーグルトは作られていますが、乳酸発酵過程で乳糖の20~30%は分解され、ラクターゼの働きで乳糖分解を促進し、小腸での乳糖吸収率を高めます。
また、半固形状のヨーグルトは、乳汁よりも胃内滞在時間が長く、乳糖分解速度は緩やか。
これらの特徴により、ヨーグルトは乳糖不耐性を起こしにくいと言われています。
ヨーグルト発祥の地、アナトリアでは乳糖不耐症の人が多かったとか。神様からの恵みを受けた食品であるのかもしれません。
4.3 全世代を幸せにする健康効果
プロバイオティクス食品として腸内細菌叢のバランスを改善することにより、以下の4つの効果をもたらします。
1) アレルギー症状の軽減
(花粉症・喘息・アトピー性皮膚炎など)
2) 整腸作用
3) 炎症性腸疾患の軽減
4) ストレス軽減
その他にも、
皮膚の保湿機能やバリア機能や便通の改善による女性にとって嬉しい美肌効果。
新型コロナウィルスでは悩まされました…。子どもから高齢者まで全世代にとって嬉しい、免疫機構を調節作用によるインフルエンザや感冒様症状などへの感染防御。
年齢を重ねると気になる諸症状…。
胃潰瘍や胃がんの原因となるピロリ菌増殖抑制、歯周病の原因菌への抗菌作用による歯周病予防、乳成分由来のACE阻害ペプチドによる血圧降下、カルシウムや脂溶性ビタミンによる骨粗鬆症予防、インスリン抵抗性の改善による糖尿病発症予防、脂質代謝異常の阻止、肥満細胞の肥大化に伴う肥満抑制など様々な疾患や諸症状に対し予防効果を発揮します。
幼少期から毎日の生活に取り入れることで、日頃のお悩みや現代病予防に一役買う食品であることに大きな期待が寄せられています。
5. まとめ
長い歴史に裏付けされたヨーグルトによる健康効果。
一方で、プロバイオティクスの代表菌であるビフィズス菌は、市販されているすべてのヨーグルトに含まれている訳ではなく、腸管内で「生きた菌」として活躍するためには、製造工程・冷蔵保存・消化吸収過程と高い障壁をいくつも越えなくてはならず、難題が山積。
課題解決を経て商品化を進めるため、各製造メーカーで日々研究が重ねられています。
パーフェクトな栄養バランス、健康効果も謳われると、ヴィーガン・ベジタリアンの方々も気になるはず。
現在、大豆やナッツミルクなどを用いた植物性のヨーグルトも発売されていまが、乳成分からもたらされる「栄養価」「風味」「食感」「香気」など美味しさを引き出し満足感を得てもらうために、添加物などが加えられている可能性があります。
添加物による健康リスクをあれこれ考え悩むよりも、ヨーグルト以外の食品から栄養を摂るほうが心の栄養も満たされます。
健康効果や健康食品が取り上げられると、1つのエース食材が品薄状態になる傾向に…。
健康効果が明らかで風味もよいヨーグルト。単品での栄養価が高いこともさることながら、プレーンヨーグルトを用いて、プルーン・各種ベリー・キウイフルーツ・バナナ等などのフルーツやハーブ・スパイスなど他の食材とも合わせやすく、スムージーのベースとしても活用できるなど、応用範囲がとにかく広いことも嬉しい特徴です。
プレーンヨーグルトは各メーカーから発売されていまが、各々、風味(酸味の強弱含む)・テクスチャー(舌触り・固さ)・強化菌種・栄養素割合に多少なりとも差があるため、「どのように用いる?」「どのような健康効果を求める?」「お味やテクスチャーの好みは?」等など、その都度使い分けができて便利、かつ、楽しめます。
プレーンこそ奥が深い。
毎日の生活に取り入れたいおススメ食材。
とは言え、エース食材だけではなく、何よりも、「咀嚼」などカラダに備わった機能を活かしつつ、他の食材やメニューと共にバランス良く食べることが最も大切です。
【参考文献】
「ヨーグルトの事典」朝倉書店
齋藤忠夫・伊藤裕之 他編
「ヨーグルトの歴史」原書房
ジューン・ハーシュ 著 富原まさ江 訳
「“進化している発酵食品”学」明治大学出版会
佐々木泰子 編
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