醤油、味噌、納豆、きな粉、油揚げ、豆腐、豆乳、枝豆…。数えればキリがない。
私たちの食卓には、主食からデザート、果てはおつまみまで、大豆製品で溢れています。
同様にお米も、主食の代表格であると共に、油脂や菓子類など様々に加工され、私たちの生活に無くてはならない存在。
日本の食文化の代表的な食材である大豆と米は、女性の健康を機能的にサポートしてくれる心強いパートナーでもあります。
美味しいだけではなく、理想的な食材。
なぜ、「理想的」と言えるのでしょうか?
目次
1.大豆と米の歴史と地理
1.1 大豆の歴史と地理
1.2 米の歴史と地理
2. 大豆と米の栄養学
2.1 大豆の栄養
2.1.1 タンパク質
2.1.2 脂質
2.1.3 炭水化物
2.1.4 ビタミン
2.2. 米の栄養
2.2.1 炭水化物
2.2.2 タンパク質
2.2.3 脂質
2.2.4 ビタミン
3. 大豆と米と女性の健康
3.1 大豆と女性の健康
3.1.1 イソフラボン
3.1.2 ペプチド
3.1.3 サポニン
3.1.4 オリゴ糖
3.2. 米と女性の健康
3.2.1 GABA(γ-アミノ酪酸)
3.2.2 オリゼニン
3.2.3 オリザニン
3.2.4 食物繊維
4. 食味・栄養満点!豊富なバリエーション
4.1 大豆製品のバリエーション
4.2 精米法によるコラボレーション
4.3 大豆と米のコラボレーション
5. まとめ
1.大豆と米の歴史と地理
1.1 大豆の歴史と地理
紀元前の古より、日本や中国など、東アジアの限られた地域で栽培され、食されていた大豆。
大豆は、中国が原産国で、日本へ渡来した産物と考えられていましたが、最新の考古学的調査では、青森県の三内丸山など縄文時代の遺跡から日本原産の野生種の圧痕が発見され、中国から弥生時代に伝播される以前より食されていた事実が判明しました。
一方、欧米諸国へは時を隔てた18世紀以降に伝播されたという史実と相俟って、同世紀の江戸時代、日本では、続編が誕生する程の人気を博した料理本「豆腐百珍」なるベストセラーが上梓。大豆との生活密着度に、日欧米間で大きな差異が感じられます。
更に現代へ視点を移すと、大豆に対する趨勢は逆転し、2015年時点の2大生産国はアメリカとブラジルで日本は18位。ブラジルの現在の生産高は、日本からの技術協力と広大な国土の賜物。消費国としても日本は世界で10位の結果に。
1.2 米の歴史と地理
中国では、凡そ1万年前に始まったとされる稲作。米の原産地は、アッサム・雲南地域とされ、インド・東南アジア諸国、中国・日本など東アジア諸国へ伝播されたと言われています。
稲作の軌跡を残す6000年から7000年前の遺跡が長江中下流域から発見され、日本では、紀元前4000年頃の縄文時代前期の遺跡からその痕跡が判明。
古来より、稲作・米食文化がアジア諸国を中心に生活に根付いていた事実が垣間見られます。
現代へ視点を移しても全生産高の約9割はアジア諸国が占め、世界的に米生産高は増加傾向である一方で、日本国内では年々生産量が低下。1965年には中国に次ぐ、世界2位の生産高を誇った日本は、2015年時点でトップ10からもランク外の結果。広大な国土を有するアメリカとブラジルは、大豆同様、生産高は増加傾向にあります。
2. 大豆と米の栄養学
タンパク質・炭水化物(糖質・食物繊維)・脂質の3大栄養素とビタミンについて、大豆と米の栄養について見ていきましょう。
2.1 大豆の栄養
2.1.1 タンパク質
大豆構成成分の35%を占めるタンパク質。必須アミノ酸9種類すべてを含み、牛乳や鶏卵など動物性タンパク質と同等100点満点の栄養バランス。効率良く消化・吸収されるという特性と共に、タンパク質としての効率も良く、美しい髪や肌、筋肉など、「キレイなカラダ」を作り、かつ、動物性食材と比べて低カロリーである理想的な栄養素。
2.1.2 脂質
大豆構成成分の20%を占める脂質。その大半が中性脂肪であり、組成を支える脂肪酸の含有割合は、大豆(乾燥)で、総脂肪酸100gあたり多価不飽和脂肪酸のn-6系リノール酸が51.8g、n-3系α-リノレン酸が10.7g、多価不飽和脂肪酸のオレイン酸21.6gと不飽和脂肪酸が約85%を占める一方、飽和脂肪酸は約15%程度に留まります。
2.1.3 炭水化物(糖質・食物繊維)
大豆で特筆すべき炭水化物の構成要素は、糖質と食物繊維の配合バランス。糖質および難消化性成分として食物繊維に分類されるオリゴ糖などを含み、その他、水溶性・不溶性いずれの食物繊維をも含むため、プレバイオティクスとしての役割が期待できます。
2.1.4 ビタミン
主に、精白米を主食とする日本人に不足しがち、かつ、糖代謝に欠かせないビタミンB1と糖質(炭水化物)・脂質・タンパク質の3代栄養素の代謝をサポートするビタミンB群を多く含みます。きな粉は大豆製品の中で最も効率よく栄養素をカラダへ運ぶ食材。
2.2 米の栄養
2.2.1 炭水化物(糖質・食物繊維)
精白米で炊き上げたご飯の凡そ1/3を占める最大の栄養素。米の糖質は消化されやすく、血糖値も上昇しやすいという特徴があります。精白米のご飯では約0.3gと殆ど食物繊維を含有しない一方で、玄米では約1.4gを有し、その内1.2gは不溶性食物繊維であるという特性から、血糖値の上昇を緩やかにし、かつ、整腸作用も得られやすい特徴があります。
2.2.2 タンパク質
炭水化物に次いで多い栄養素。タンパク質含有量の増加に伴い、日本人好みの「粘り」を形成。小麦と比較した場合、必須アミノ酸が多く含まれ、栄養バランスに優れているという特徴があります。
2.2.3 脂質
中性脂肪がそのほとんどを占める脂質。脂肪酸の内訳は、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸の順で含有量が多く、全脂肪酸中の約90%以上を占めています。
2.2.4 ビタミン
ビタミンE、B1、B2、パントテン酸などが多く含まれる一方で、ビタミン類は、糠層と胚芽に多く含まれるため、精白米と玄米では含有量に大きな違いがあります。ビタミン類も効果的に摂取したい場合は、玄米や胚芽米を利用することをお勧めします。
3. 大豆と米と女性の健康
毎日の食卓に並ぶ大豆と米には、ストレスやお通じの問題など日々向き合う健康課題や年齢に応じたお悩み解消に役立つ成分も多く含まれています。各々どのような有効成分が含まれているのでしょうか?
3.1 大豆と女性の健康
3.1.1 イソフラボン
エストロゲン様活性を有し、植物性エストロゲンとも呼ばれています。大豆を始め、大麦、野菜、ゴマなどの種子類にも含まれている成分。抗コレステロール、骨代謝の改善、ホルモン依存性である乳がんの予防、メノポーズ期の症状緩和などに有効であると言われています。
欧米諸国と比較し、アジア諸国での乳がん発症率の低さは、幼少期から習慣的に大豆を摂取しているライフスタイルが功を奏しているとの見解。
ホルモン様活性を有するイソフラボンは、男性特有の癌である前立腺がんの発症予防にも有効性を発揮。
一方で、効果的であるが故に、摂取過多には注意が必要な成分でもあり、摂取目安上限が設けられています。
3.1.2 ペプチド
アミノ酸が2個から10個結合することで形成されるペプチド。大豆由来のペプチドは、抗コレステロール作用を有します。
3.1.3 サポニン
ステロイドなどに糖が結合した配糖体。成分名のサポニンは、ラテン語のsapo石鹸に由来。大豆を煮ると泡立つのは、この成分が原因です。抗ウィルス、大腸がん予防、抗酸化、肝障害抑制作用を有します。泡まで逃がさず取り入れたい…。
3.1.4 オリゴ糖
腸内で有用菌を増加させ、有害菌を抑制する作用を担うプレバイオティクスであるオリゴ糖。有用菌の増加に伴いカルシウムの吸収は促進され骨代謝が円滑に進みます。また、難消化性でもある大豆オリゴ糖は、余分なコレステロールを吸着し排出を促すと共に、便通の改善にも役立ちます。
3.2 米と女性の健康
以下、米の有効成分として取り上げるのは、主に糠層・胚芽に含まれる成分です。
3.2.1 GABA(γ-アミノ酪酸)
脳の血流量や脳への酸素供給量を増加させ脳機能改善をサポートする働きを担う成分。脳内のGABA濃度が増すことで気分が落ち込む、イラ立つ、眠れないなどの抑うつ状態の緩和にも役立つ抗ストレス作用を有します。交感神経を鎮める作用も有するため、血圧降下にも有効。
3.2.2 オリゼニン
米糠の成分であり、アミノ酸のみで構成されているタンパク質。良好なアミノ酸スコアを特徴とし、コレステロール低下や抗肥満作用を有しています。とは言え、効果を期待しご飯を食べ過ぎると、中性脂肪として蓄え逆効果に…。
3.2.3 オリザニン
米糠の成分であり、鈴木梅太郎博士により発見され、オリザニンと命名。第1番目のビタミンであり、現在のビタミンB1。糖質の代謝に関わり、精白米を主食とする日本人に不足しがちな成分。
3.2.4 食物繊維
糠層に含まれ、最も特筆すべき機能を発揮する成分。そのほとんどは不溶性食物繊維であり、主食として毎食摂取することで便通改善に役立ちます。同時に、水溶性食物繊維も含むため、精白米での弱点である食後血糖値の上昇を緩和する作用も有します。
4. 食味・栄養満点!豊富なバリエーション
大豆、米、各々に含まれる栄養素だけでも十分豊かであるものの、多様な製造工程から誕生した多種多様な食材は、食味・栄養バランスに優れ、尽きることのない食の楽しみを与えてくれます。食味を活かすことはもちろんのこと、栄養素を効果的に食すためのポイントを見ていきましょう。
4.1 大豆製品のバリエーション
江戸時代に「豆腐百珍」なるベストセラー本が誕生したように、大豆の加工食品である豆腐1つから100以上ものメニューが200年以上も前に考案されました。
それは、著者である「何必醇(かひつじゅん)」というニックネームに「こくのある濃い味ばかりがうまいものではない」という意味合いが含まれている通り、豆腐の淡白な食味や加工方法による変幻自在な特徴ゆえ、創作者の想像力を掻き立てるからかもしれません。
確かに、豆腐の製造工程下では、豆腐という最終形態のみに固執することなく、豆乳・おから・湯葉・高野豆腐・焼き豆腐・厚揚げ・油揚げ・がんもどきと多様な食材が展開され、私たちは、形態の違いだけではなく、千差万別に変化した各食材の栄養素も享受します。
これは、豆腐に限ったことではありません。原材料の大豆自体、製造方法の違いにより、大豆油・きな粉・醤油・味噌・納豆が誕生し、その成長過程においては、枝豆・もやしとして出荷され食されています。
その中でも、多様な食材と調和し、かつ、摂取しやすい形態、イソフラボンを多く有し、効率的かつ効果的に摂取可能であり理想的な食材であるきな粉。
奈良時代には薬として用いられ、その高い効能は歴史的に証明されています。故に、過剰摂取による月経時の出血量の増加や経血期間の延長などが懸念されますので、日常的な摂取過多には注意が必要です。
4.2 精米法によるコラボレーション
白く艶やかな白米とご飯のお供。精白米を栄養面から考えると、食味・食感・外観的要素から敢えてそぎ落とされている糠層と胚芽に栄養素は集約されており、魅惑的な光景は食欲を増進させる一方で、栄養面では残念な結果に。
食味・食感・栄養すべてで高得点を取得するには、精白米 : 玄米 50 : 50 に押麦を追加することで100点満点の良好なバランスに変化。
主菜・副菜との食味バランスを考慮し、和食では精白米量を増やし、洋食では玄米量を増やすなどメニューに合わせて調整も可能です。玄米の割合に応じて、浸水量や時間を調節することが調理のポイント。
玄米表層の防水機能により精米と比較してより多くの浸水時間を要すること、消化不良を惹起する可能性、日本人好みの食感との乖離といった観点から敬遠されていた玄米。現在では、栄養素は従来米に引けを取らず、これらの難点を改良した商品もありますので、過去の経験から敬遠していた方は再度試されてみても良いかもしれまん。
既に玄米はお試し済みの方、バリエーションを豊かにしたい方は、雑穀米にトライしてみてはいかがでしょうか。
精白米に高きびを1~2割程度加えて炊飯を試してみられることをおすすめします。抗酸化作用を持つアントシアニンによる色素効果で、鮮やかな赤紫色に変色し、食欲を誘うと共に栄養バランスにも優れています。
高きびは、クスクスに似た丸みを帯びた小粒状で、ヴィーガン・ベジタリアンの方々の間では、ひき肉の代用として重宝されており、実際の栄養バランスも、ビタミンB群やアミノ酸バランスに優れ、不足しがちな栄養素を補ってくれます。
4.3 大豆と米のコラボレーション
大豆とお米。各々、栄養素のバランスが秀逸な食材ではありますが、精白米では、ビタミンB1, B2, および、体内では合成されず、食品から摂取する必要のある必須アミノ酸・リシン(リジン)が低いという弱点を有しています。
上記の栄養素は、動物性タンパク質からも補うことは可能な一方で、大豆とお米を一緒に摂ることで理想的な栄養バランスは形成され、ウェイトコントロールやヴィーガン・ベジタリアンにも対応可能な優れたコラボレーションと言えます。
昨今では、黒米、大豆、雑穀などをバランスの良い配分で調理しやすいように加工された商品も。
ご自身のお好みを探求してみてはいかがでしょうか?
5. まとめ
栄養バランスに優れ、長い歴史の中で愛し食され、商品化されてきた大豆と米。世界に誇る和食を支える2大食材です。
古より伝わる「医食同源」は、私たちにとって馴染み深い言葉。
飽食時代の今、忘れられがちな言葉でもありますが、自然からの恵みである栄養価の高い食材に加工技術を加え活用してきた先人たちの知恵が長寿国を築き上げた所以の一つでもあります。
一方で、食物アレルギー5大原因食物にも含まれている大豆と米。アレルギー発症誘因の多くは、鶏卵・牛乳・小麦であり、これらの食品が全体の2/3を占めている事実から、大豆と米を原因とする発症は限定的。
また、アレルギー反応の機序として、未消化のタンパク質に曝露されること、ビタミンDの欠乏など食材以外の要因も示唆されています。
アレルギー反応には十分留意が必要であり、原因食物を探索すると共に専門医からのアドバイスも重要。
いくつかの注意点はあるものの、栄養素などミクロな視点で食材に関心を持つことと共に、摂取量を含む全体のバランスも広く見渡すマクロな視座、そして、食事そのものを楽しめる環境があることが日々の食卓では大切なのかもしれません。
そして、やはり、何を隠そう、伝統的な和食は機能的でおいしいのです。
【参考文献】
「機能性食品の事典」朝倉書店
荒井綜一 他編
「豆腐百珍」教育社新書
何必醇 著・福田浩 訳
「大豆の科学」日刊工業新聞社
五日市哲雄・久保田博南 著
「大豆の機能と科学」朝倉書店
小野伴忠 他編
「米の科学」朝倉書店
髙野克己 他編
水道水・食品は安全?化学物質PFASが健康に与える影響
茶カテキンとフッ化物のハーモニーが功を奏するデンタルヘルス
【家族・こども・私】気候変動が健康に与える影響と未来予想図
美食家も絶賛!食べて美しくなるシンプルで風味豊かな食文化・和食
【3.11】3つの大震災から考えるNEWSの視点で防災レジリエンス
【バスタイムで美活】スキンケアもストレスケアも同時にできる!