「ウェイトコントロールと健康管理も兼ねて、お肉の量を減らし大豆製品を増やす生活を始めてから、何となくお腹の張りを感じる…」
ヘルシーライフスタイルに移行した途端に不調を感じるなど、良かれと思って始めたことが逆効果となってカラダに現れ、モチベーションダウンした経験はありませんか?
なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか?また、そのような時、どのように対処したら良いのでしょう?
今回は、“ヘルシーな食生活”へ移行した後に発生する腹部の不快症状について、原因となり得る高FODMAP食についてのお話です。
目次
1.FODMAP(フォドマップ)とは?
2. 高フォドマップ食品と低フォドマップ食品
2.1 高フォドマップ食品
2.2 低フォドマップ食品
3. 過敏性腸症候群とは?
3.1 原因
3.2 症状
3.3 診療科と治療
4. FODMAP Diet(フォドマップダイエット)
5. まとめ
1. FODMAP(フォドマップ)とは?
FODMAPは、Fermentable(発酵性の)、Oligosaccharides(小糖類:オリゴ糖)、Disaccharides(二糖類)、Monosaccharide(単糖類)、And (&)、Polyols(多糖類)の各頭文字を用いた略称。
これらの糖類は、小腸で消化吸収されず大腸へ到達し、大腸内細菌によって分解される特質から難消化性糖類と呼ばれています。
難消化性糖類は、言わば、「腸内細菌のエサ」。
FODMAPは難消化性糖類を含む食品群をまとめ、分かりやすく分類したものです。
では、なぜ、これら腸内細菌のエサになる食品群を分かりやすく提示する必要があるのでしょうか?
難消化性糖類を多く含む高FODMAP食品による生理活性反応にその答えが隠されています。
FODMAPが高レベルの食品を多く摂ることで、腸内細菌のエサが過剰になり、豊富なエサを与えられた細菌が活性化し、発酵を促進。
その結果、腹部不快感などの消化器不調症状が出現する場合があります。そこで、難消化性糖類を含む食品の過剰摂取を避け、摂取量をコントロールできるように設けられた指標です。
腹痛や下痢・便秘などの便通異常を愁訴とする過敏性腸症候群の治療の一環として、一定期間または長期間にわたり、高FODMAP食品の摂取制限を設けるなど、食事療法に用いられています。
FODMAPは、オーストラリアMONASH大学の研究員により分類、方法論が開発され、食事療法FODMAP Dietとして確立されました。
2. 高フォドマップ食品と低フォドマップ食品
大腸内細菌のエサとなる難消化性糖類を多く含む食品と少ない食品について、MONASH大学による分類を見てみましょう。
2.1 高フォドマップ食品
[野菜]
アーティチョーク、アスパラガス、カリフラワー、グリーンピース、マッシュルーム、玉葱
[果物]
リンゴ、リンゴジュース、サクランボ、ドライフルーツ、マンゴー、ネクタリン、桃、洋ナシ、プルーン、メロン
[乳製品および乳代替品]
牛乳、カスタード、エバミルク、アイスクリーム、豆乳(丸大豆)、コンデンスミルク、ヨーグルト
[タンパク源]
豆類(ひよこ豆、レンズ豆、大豆)、種実類、肉類と魚介類のマリネ、加工肉
[穀物類]
小麦、ライ麦、全粒粉のパン、シリアル、ビスケット、スナック菓子
[甘味食品]
コーンシロップ、蜂蜜、無糖菓子、キシリトール
[種実類]
カシューナッツ、ピスタチオ
2.2 低フォドマップ食品
[野菜]
ナス、緑豆、チンゲン菜、パプリカ(グリーン)、ニンジン、キュウリ、レタス、ジャガイモ、ズッキーニ
[果物]
マスクメロン、キウイフルーツ、マンダリン、オレンジ、パイナップル、イチゴ、バナナ
[乳製品および乳代替品]
アーモンドミルク、チーズ(ブリー、カマンベール)、フェタチーズ、ハード系チーズ、ラクトースフリー牛乳、豆乳(ソイプロテイン)、テンペ(インドネシアの大豆発酵食品)
[タンパク源]
卵、木綿豆腐、加熱調理済の肉類と魚介類、
[穀物類]
グルテンフリーコーンフレーク、オーツ、キヌアフレーク、キヌア、米、コーンパスタ、ライスケーキ、グルテンフリーパン
[甘味食品]
ダークチョコレート、メープルシロップ、ライスモルトシロップ(玄米シロップ)
[種実類]
マカデミアナッツ、ピーナッツ、カボチャの種、ウォルナッツ、松の実、アーモンド
3. 過敏性腸症候群とは?
3.1 原因
主に、受験やプレゼンなど心的負荷が強くなる時期に、緊張や過労、ストレスなどの心理状態を反映して、腸の蠕動運動に影響を与え発生する消化器症状。その多くは、10代から30代に初期症状を発症します。
世界では、人口の約15%、7人に1人が過敏性腸症候群を有していると言われています。
3.2 症状
《消化管症状》
・便意に伴う腹痛、腹部不快感
・下痢や便秘などの便通異常
・腹部膨満感、鼓腸(腸内ガス、放屁)
《心理的症状》
・悪心、嘔吐、食欲不振
・頭痛、頭重感、めまい
・月経異常、抑うつ感、不眠、焦燥感
下痢と便秘症状を繰り返す場合は、大腸がんや他の病気が潜んでいる可能性もありますので、「ストレスが原因」と自己判断せず、医療機関で相談してみることをお勧めします。
3.3 診療科と治療
・消化器内科
・食事療法または/および薬物療法
不安や過緊張を回避するためにも、日頃から、ストレスマネジメントに取り組み、過労を回避するために、生活リズムを整えることも大切です。
4. FODMAP Diet(フォドマップダイエット)
高フォドマップ食の摂取量を減らす、または、一定期間摂取しないことで、過敏性腸症候群の約80%程度改善が見られるという報告があります。
高フォドマップ食に該当する食品を摂り始めてから、腹部膨満感や便意に伴う消化器症状が発生した場合は、ファーストステップとして、高フォドマップ食の摂取を控え、低フォドマップ食へ切り替えてみる。
症状が治まったら、セカンドステップとして、少量ずつ高フォドマップ食を再開して様子をみるなど、症状を誘発する原因食品を探索し、リスク軽減を図りながら、嗜好品も取れるようになると良いですね。
症状が改善しない、増悪している場合は、医療機関を受診なさることをお勧めします。
5. まとめ
高FODMAP食に挙げられる食品は、トルコ料理など中東料理・地中海料理の食材として多く用いられるものが多い印象。
欧米諸国では、過敏性腸症候群の治療の一環として、ミントティやミントのサプリメントを用いるケースも。
トルコでは、ミントティやチャイ(紅茶)を1日に複数回飲用する習慣があります。伝統として継承されてきた食習慣の中で、適切な食材の組み合わせを体得してきたのかもしれません。
高FODMAP食に分類されている食材の多くは、食物繊維も豊富で、本来、腸内細菌叢を改善し、肝臓や筋肉など全身のエネルギー源として活躍するハイパフォーマンスプレイヤー。
一方で、「健康に良い」と思って食べていても、特定の食品を過剰に摂取したり、牛乳による乳糖不耐性のように、体質に合わない可能性もあります。
伝統的和食を組み合わせること、日頃からストレスマネジメントを取り入れることで改善の見込みも高くなります。
食習慣を変更する際には、経過を見ながら、適量を摂取することが、ヘルスプロモーションにも役立ち、美味しく栄養価も高い食材と長くお付き合いできるポイントです。
[参考URL]
MONASH University, Australia https://www.monashfodmap.com/
HERVARD Medical School, U.S. https://www.health.harvard.edu/
JOHN HOPKINS medicine, U.S. https://www.hopkinsmedicine.org/
STANFORD Medicine, U.S. https://stanfordhealthcare.org/
【全編】女性のカラダにも優しい!日本人は大豆と米からできている!?
【こどもと家族の健康】高コレステロールがこどもの未来に与える影響
緑豊かな薫風の季節!屋外アクティビティで五感を研ぎ澄まし暑熱順化
世界を牽引するニュートリシャスな2大料理とは?
サイクリングでサスティナブルなHAPPY Cycleが生まれる!