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【子宮頸がん予防②】細胞診ベセスダシステムとHPV検査・HPVワクチン

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【子宮頸がん予防②】細胞診ベセスダシステムとHPV検査・HPVワクチン

約10年の休止期間を経て、2022年4月より、定期接種ワクチンとして、対象となる年齢の女児へ案内文送付が再開された子宮頸がんワクチン。

案内文を手にしても、「副反応は?」「危険ではない?」「エビデンスはあるの?」など、お嬢さんをお持ちのご家族は、子宮頸がんワクチンに対して、その有効性や副反応などリスクについて疑問や懐疑心を抱きながら接種を検討しているところではないでしょうか。

子宮頸がん予防法第2部は、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス:HPVワクチン(目次3,4,5)について国内外の動向を含め解説します。

目次

1. 検査報告書ベセスダシステム
1.1 ベセスダシステムとは
1.2 結果の見方と対応法
2. 子宮頸がん予防と早期発見のための検査法
2.1 子宮細胞診
2.2 HPV検査
3. HPVワクチンとは?
3.1 導入の経緯
3.2 ワクチンで得られる効果
4. HPVワクチンの現在
4.1 WHOを中心とした世界の動向
4.2 厚生労働省を中心とした日本の動向
5. まとめ

3. HPVワクチンとは?
3.1 導入の経緯
世界では、2分に1人が子宮頸がんを原因として命を落としている現実。(2018年WHO)

日本では、年間約11,000人が新たに子宮頸がんと診断され、年間約2,900人の方々が子宮頸がんでお亡くなりになっています。(2019年厚生労働省)

子宮頸がんの原因として、95%以上の割合でヒトパピローマウイルス(HPV)感染が関与。通常、わたしたちの体に備わっている自浄作用により、一過性の感染に留まり、消失します。

一方で、感染の反復、免疫低下などによる持続感染によって子宮頸がんへと発展し発症に至ります。

HPVは、性交経験があるひとの80%から90%は、一生に一度は感染するウィルス。子宮頸がんは、私たちの日常生活の中に潜んでいます。

このHPV感染予防を目的として、欧米では、2006年頃より、子宮頸がん発症に強く関与するHPV16型と18型に対応するワクチン接種を開始しました。

3.2 ワクチンで得られる効果
避妊具を用いた性交経験に関するエデュケーションも大切ですが、避妊具は、避妊法としても、子宮頸がんや性感染症(STD : Sex Transmitted Disease)予防としても、100%ではありません。

そこで、性交未経験であると想定される年齢層の女児を対象とし、HPV感染予防に有効性が認められているワクチン接種を行うことを、WHOを中心に、世界的に推進されています。

ワクチンは3回接種が基本で、その効果は約12年間持続します。

一方で、先行導入国である、オーストラリアなどでは、ワクチンの有効性は既に証明されていますが、それでも、予防効果は100%ではありません。

ワクチン接種後も、併せて、子宮頸がん検診を受けることが大切です。

4. HPVワクチンの現在
4.1 WHOを中心とした世界の動向
WHOの見解では、HPVワクチン接種後の副反応は、疼痛、発赤、腫脹、疲労感など新型コロナワクチンやインフルエンザワクチンと同様の症状であり、重篤な事例は稀。かつ、副反応の持続期間も短期間。

若干のデメリットに対し、2価(16,18), 4価(6,11,16,18), 9価(6,11,16,18,31,33,45,52,58)ワクチンは、子宮頸がん、および、関連するSTD(Sex Transmitted Disease:性感染症)への予防効果として、いずれのタイプのワクチンでも有効であり、メリットが上回る。

これらの客観的観測を根拠に、接種を推奨しています。

現在、9歳から14歳の女児を対象にHPVワクチン接種を推奨しているWHO。

北米やニュージーランドなど複数の国では、独自に、子宮頸がん以外の尖圭コンジローマなどSTDへの有効性も認められる9価ワクチンを中心に、男児にも接種勧奨を実施しています。

2020年、WHOは、2030年までに、90%の女児が15歳までにワクチン接種を完了すること、35歳時および45歳時までの2大ライフステージで子宮頸がん検診受検率70%達成すること、子宮頸がんと診断された女性の90%が治療を受けること、これら3つの指標をゴールとし、90-70-90プランを発表しました。

2007年頃より、HPVワクチンを先行的に実施してきたオーストラリア、北米、北欧などの諸国では、接種した年代層で子宮頸がんの病変および子宮頸がん発症件数の減少が認められています。

4.2 厚生労働省を中心とした日本の動向
日本では、小学校6年生から高校1年生の女児を対象に、公費による定期接種が行われています。

公費対象として、一般的に導入されている子宮頸がんワクチンは、HPVの中でも、子宮頸がん発症に70%程度の割合で関与すると言われている、主に16型と18型を予防対象としている2価(サーバリックス)と4価(ガーダシル)の2種類のワクチン。

現在は、より多くの予防効果を得ることを目的として、9価(シルガード)ワクチンの公費導入※1に向けて、副反応報告等を含め検討されています。

副反応や接種後の相談窓口も設けられていますので、詳しくは、厚生労働省ホームページをご参照ください。

日本の現状として、子宮頸がん検診受診率は40%程度に留まり、ワクチン接種も欧米諸国や韓国と比較し、取組への遅延が見られる日本では、若年層の女性を中心に子宮頸がん罹患率が高まっており、先進国としては例外的に、罹患・死亡率共に高水準であると言われています。(2021年国立感染症研究所)

※1 シルガード9価ワクチンも2023年4月より公費対象となりました。お住まいの自治体等でご確認ください。

5. まとめ
世界は今、子宮頸がんの撲滅を目指して、検診だけではなく、HPVワクチン接種の目標値を掲げて推進しています。

ワクチン接種の対象は、未成年のお子様であり、最終的な決定権はご両親にあります。なぜ受けるべきかという説明も含め、ご家庭内でも、お子様と話し合いをする時間を設けなくてはいけません。

副反応も含め、様々な検討事項があり、「なんだか大変」と思っていらっしゃるのではないでしょうか。

今後の動向によっては、性教育の一環として、教育現場との連携が図られる可能性もありますが、現状では、ご家庭に一任されています。

日本、世界の動向に合わせて、学校、ママ友の動向も確認しつつ、子宮頸がんワクチン接種を通して、ご家庭内でのお話合いの場が負担にならず、良い機会となりますように。

[参考URL]
WHO https://www.who.int/
厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/

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医療・保健の国家資格を有し、医学系学会で学びを深め、グローバルでクリエイティブな環境、読書とアート、世界の建築と庭園、お料理とグローカル食材をこよなく愛する運営者wanobiが、これまでに培った知識と経験、学びのアップデートを基に、女性・こども・家族のココロとカラダにとって大切な情報をお伝えします。日・仏・英3か国語で運営

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